毛利敬親

毛利敬親（もうり たかちか / よしちか）



毛利敬親は、江戸時代後期から明治時代初期にかけての大名であり、華族でもあります。長州藩の第13代藩主であり、毛利氏の第27代当主にあたります。正一位という高い位階を持ち、幕末の混乱期において重要な役割を果たしました。

生涯



家督相続以前


1819年、毛利敬親は福原房昌（後の毛利斉元）の長男として生まれました。当初は福原家の養子となる予定でしたが、後に毛利本家に戻り、毛利斉熙の養子となりました。幼名は猶之進といい、後に父から偏諱を受けて教明と名乗りました。1836年、萩で大洪水に遭遇し、避難を余儀なくされています。

家督相続


1836年、父と先代藩主が相次いで亡くなったため、教明は毛利斉広の養子となり、1837年に家督を継ぎました。この時、12代将軍徳川家慶から偏諱を受け、教明から慶親へと改名しました。また、斉広の娘である都美姫を正室とすることが決まりましたが、彼女がまだ幼かったため、結婚は10年後に行われました。

藩政改革


1838年、萩に入った慶親は、質素倹約と貨幣流通の改革に取り組みました。村田清風を登用し藩政改革を断行、彼の死後も坪井九右衛門を重用しました。1841年には江戸に藩校・有備館を設立し、領内の実態調査や軍事力強化にも努めました。1849年には藩校・明倫館の改革も行いました。

第一次長州征伐


1853年、ペリー来航時には沿岸警備を担当。1858年には密勅を受け尊王運動に尽力。その後、周布政之助らを登用し、攘夷を主張しました。1861年には長井雅楽の公武合体策が失敗し、藩論は攘夷へと転換しました。1862年には攘夷を実行、1863年には藩庁を山口に移転しました。しかし、外国軍艦からの報復攻撃や「八月十八日の政変」で長州藩は京を追われました。1864年には禁門の変を引き起こし、朝敵とされ官位を剥奪、将軍からの偏諱も剥奪されて慶親から敬親に改名しました。さらに、四国連合艦隊との下関戦争に敗北し、第一次長州征伐では家老を切腹させ、自身も謹慎しました。

尊王攘夷から尊王開国、薩長同盟と倒幕


1865年、高杉晋作らが挙兵し、保守派を打倒すると、長州藩は倒幕へと動き出します。奇兵隊などの軍事組織を整備し、大村益次郎を登用して西洋式軍制を導入しました。1866年には薩長同盟を結び、第二次長州征伐にも勝利しました。1867年にはイギリスとの関係を構築し、討幕の密勅を受けました。そして、薩摩藩らと共に官軍を組織して上洛、王政復古の大号令を成功させました。1868年、敬親は明治天皇に拝謁し、左近衛権中将に任ぜられました。

晩年と最期


1869年、敬親は島津忠義らと連署して版籍奉還を奉請しました。権大納言の位を得て、養子の毛利元徳と共に領地を下賜されました。同年に家督を元徳に譲り隠居しました。1871年、山口藩庁内殿で53歳で亡くなりました。

経歴




人物・逸話



敬親は質素な生活を好み、民衆に寄り添う姿勢を示しました。家臣団には、率直な気持ちと決意を述べ、家臣と協力して藩政を行うことを宣言しました。人材育成に力を注ぎ、吉田松陰の才能を高く評価し、自らもその門下となりました。その人柄は長州志士からも慕われていました。家臣の意見を尊重し、「うん、そうせい」と答えていたことから「そうせい侯」と呼ばれていたという逸話もありますが、これは後世の創作である可能性が高いです。

政治的には、重要局面では自ら決断を下し、家臣の意見に耳を傾けました。公武合体から尊王攘夷への転換時には、朝廷への忠誠を誓い、幕府への信義を貫きました。第一次長州征伐では、藩の運命を賭けた会議で、幕府への帰順を決断しました。また、薩摩藩との連携においては、正道を重んじることを木戸孝允に伝えました。

しかし、家臣の提言を拒否した例もあり、下関戦争直前の停戦説得や、井上馨の密航留学の申し出を却下しました。

土佐藩主山内容堂との交流もあり、その豪放な性格を評しています。版籍奉還を促された際には、全国の大名を納得させるために率先して模範を示すことを決意しました。その聡明さを木戸孝允は恐ろしく感じたというエピソードも残っています。

司馬遼太郎は敬親を「独創力はないが、人物眼と理解力に富み、寛大であった」と評し、清水義範は「無能な名君」と評しました。また、版籍奉還後すぐに隠居したことから、私欲や野心が無かったと評しています。

家臣



以下は、武鑑に掲載された主要な家臣です。

  • - 一門八家：毛利氏の一族。
  • - 家老：藩政を担う重臣。
  • - 用人：藩主の側近。
  • - 側用人：藩主の側近で、機密事項を扱う。
  • - 城使：藩主の代理として城内外の連絡を行う。

偏諱を与えた人物


以下は、敬親・敬親時代に偏諱を与えられた人物です。

  • - 毛利親信、毛利親民、毛利親直、毛利親彦、毛利親経、毛利親詮
  • - 粟屋親忠、井原親章、浦親教、熊谷親直、国司親相、佐佐木親辰、宍戸親基、志道親良、清水親春、清水親知、根来親祐、根来親保
  • - 福原親俊、鈴尾親徳、益田親興、益田親施、益田親祥、益田親孚

系図



実際の親子関係のみを示しています。

脚注



[参考文献] に詳細が記載されています。

参考文献




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