防刃ベスト

防刃ベスト

防刃ベストとは、刃物による攻撃から着用者の身体を保護するための防具です。しばしば「防刃チョッキ」とも呼ばれます。防弾ベストと混同されることがありますが、防刃ベストはあくまで刃物に対する防御を目的としており、銃弾を防ぐことはできません。

素材

防刃ベストの素材としては、主に以下のものが使用されます。

ケブラー繊維
金属板
ポリカーボネート

これらの素材を組み合わせて縫製することで、刃物に対する強度を高めています。

繊維製の防刃ベストは、比較的柔らかく、長時間の着用に適しているという利点があります。しかし、金属製の防刃ベストに比べて高価になる傾向があります。また、ケブラー繊維は水に濡れると強度が低下するため、雨天時の使用や保管には注意が必要です。

規格

防刃ベストの性能を評価する基準として、アメリカ司法省の NIJ Standard-0115.00 があります。この規格では、刃物を自然落下させ、貫通の度合いによって合否を判定します。

防刃基準には、刃物試験（P1 および S1）とスパイク試験があり、それぞれの試験に対して証明書が発行されます。また、脅威レベルに応じて L1、L2、L3 の3段階のレベルが設定されています。

弱点

金属製の防刃ベストは、刃物に対する高い防御能力を持つ一方、硬いため長時間の着用には不向きです。また、肩や脇腹、背面上部など、防御できる範囲が限られるというデメリットもあります。

警察・警備員における使用

日本

日本では、警察官が制服の上着の上に防刃ベストを着用している姿がよく見られます。これは、日本国内の犯罪において銃器の使用が比較的少ない一方で、刃物が使用されるケースが多いためです。外勤の警察官は、ほぼ常時防刃ベストを着用しています。

私服警察官や民間の警備員も、身辺警護のために防刃ベストを着用することがあります。これらの目的で使用される防刃ベストには、外見からは防刃ベストと分からないようなカジュアルなデザインや、一般的なジャンパーやコートに偽装した製品も存在します。

アメリカ

アメリカ合衆国の警察官や警備員が着用するベストは、アウタータイプ・インナータイプともに、キャリアと呼ばれる布または合成繊維製のベストの内部に防弾素材（ケブラーなど）を挿入する構造が一般的です。そのため、防弾素材と防刃素材を重ねて挿入し、1着のベストで防刃と防弾の両方の機能を持たせることも可能です。

しかし、近年では銃器の性能向上により、従来の防弾ベストでは防ぎきれないケースが増加しています。そのため、より高性能な防弾ベストが求められるようになり、いたちごっこのような状況が生じています。

関連項目

防犯装備
衛視
腹当
カットギア
防牙ベスト
カットベスト
カットカラー

猟犬がクマやイノシシなどの動物と対峙した際に、怪我を軽減するための装備です。

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