陰陽師

陰陽師について

陰陽師（おんみょうじ、おんようじ）は、古代日本において重要な役割を果たした官職です。この職は中務省の陰陽寮に属し、陰陽五行思想に基づいて占筮や地相（風水的な概念）を行う技術者を指しました。古代日本の律令制のもとで、陰陽師は公的な職務を担っており、一方で中・近世においては民間においても祈祷や占術を行う人物として知られるようになりました。

歴史的背景

陰陽師の起源は古代中国の陰陽五行思想にあり、すべての事象が陰陽と五行の組み合わせで成り立っているという考え方から発展しました。日本への侵入時期ははっきりとわかりませんが、飛鳥時代や百済からの学者による影響を経て、推古天皇においてその思想が広まりました。特に、聖徳太子によって陰陽五行説が国政に取り入れられ、公式に暦が採用されるなど、当時の政治に与えた影響は大きいとされています。

また、陰陽寮は676年に設置され、その後は開祖としての役割を強化したことが記録されています。特に天武天皇は陰陽道に精通しており、陰陽師という表現が使われ始めた時期にもあたるため、陰陽道の発展に寄与した重要な人物となります。

律令制下の陰陽師とその役割

律令体制の中で、陰陽師は占筮・地相に特化した存在として位置づけられました。彼らの職務は、天文観測や吉凶判断を行うことが主なもので、公的な場面では重要な役割を果たしていました。特に、土地の選定や遷都の際には陰陽師の判断が重視され、国家の安定に寄与しました。

また、陰陽寮内部では方技の制度が整備され、各博士と陰陽師が登録されて公式な地位を持つことが認められました。その後、平安時代になると陰陽道はより一層仏教や道教の影響を受けるようになり、儀礼的な側面も強化されていきました。

平安時代から鎌倉時代への変遷

平安時代中期には、陰陽道の宗教化とより密接に結びつくことになります。特に御霊信仰が広まり、恐れられていた怨霊を鎮めるために陰陽師の役割が強調されました。このような状況下で、陰陽師は文化的かつ宗教的な権威を獲得し、その職掌は次第に政治や社会の中核に位置するようになります。その後、武士の台頭にともない、陰陽師は一定の影響力を保ちながらも、次第にその役割は制限されることとなります。

近世と近代の影響

中世以降、陰陽道は民間に広まり、民間陰陽師という存在が増加します。これにより、陰陽師という名称は官職に限らず、一般市民に広まり、小規模な祈祷や占いを行う者たちを指すことが一般的になっていきました。このような国民的な流行の中でも、陰陽師は多面的な側面を持つ社会的存在となり、文化や民俗とも深い結びつきを持ちました。

現代における陰陽師の影響

明治時代に入ると、陰陽道は国家政策により排除されていますが、その後の昭和や平成の時代には、陰陽師を題材にした創作物も多く発表され、大衆文化においてもその影響が見られるようになります。陰陽道は今もなお、一部の信仰や文化的活動として続いていますが、当初の役割とは異なり、民俗としての性格を強めています。

まとめ

陰陽師は古代から近代にかけて、日本の文化や政治に大きな影響を与えた存在です。その役割は時代とともに変化し、法的な責務から民間の信仰へと多様化していきました。現代の陰陽道は新たな形でその存在を保ちながら、文化遺産としての位置づけを維持しています。

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