陽子線治療

陽子線治療とは

陽子線治療は、放射線療法の一種であり、粒子線治療に分類されるがん治療法です。陽子線をがん細胞に照射することで、がん細胞を破壊します。日本国内では、約20の施設で陽子線治療装置が導入されており、治療を受けることができます。

粒子線治療には、陽子線よりも重い粒子（主に炭素イオン）を用いる重粒子線治療もありますが、陽子線治療は、比較的副作用が少なく、効果的な治療法として注目されています。

治療の仕組み

陽子線治療では、線形加速器、サイクロトロン、シンクロトロンなどの加速器を用いて、陽子線を生成し、患部に照射します。陽子線は、特定の深さでエネルギーを集中させる「ブラッグピーク」という特性を持っており、この特性を利用して、がん細胞に選択的に放射線を照射し、周囲の正常細胞への影響を最小限に抑えることができます。

適用部位

陽子線治療は、以下の部位のがんに対して適用されています。

脳[[腫瘍]]
頭頸部癌（鼻、口、喉、顎、耳）
食道癌
非小細胞肺癌
肝臓癌
膵臓癌
前立腺癌
その他

ただし、胃や腸などの常に動いている臓器は、正確な照射が困難なため、陽子線治療の対象外となる場合があります。

陽子線治療のメリット

副作用の軽減: 陽子線は、がん細胞に到達する直前で最大のエネルギーを放出するため、周囲の正常細胞への影響を最小限に抑えることができます。これにより、X線治療に比べて副作用が少ないとされています。
高い治療効果: 陽子線は、がん細胞に選択的に放射線を照射できるため、高い治療効果が期待できます。特に、従来の放射線治療では治療が困難だった、深部にあるがんや、周囲の重要な臓器に近いがんに対して効果を発揮します。

陽子線治療の注意点

治療期間: 陽子線治療は、通常、数週間から数ヶ月程度の治療期間が必要です。
治療費: 陽子線治療は、比較的高額な治療費がかかる場合があります。
適応: すべてのがんが陽子線治療の対象となるわけではありません。個々の患者さんの状態に合わせて、適切な治療法を選択する必要があります。

陽子線治療を受けられる施設

以下は、日本国内で陽子線治療が受けられる主な施設です。

筑波大学陽子線医学利用研究センター
国立がん研究センター東病院
静岡県立静岡がんセンター
若狭湾エネルギー研究センター
兵庫県立粒子線医療センター
南東北がん陽子線治療センター
相澤病院
名古屋陽子線治療センター
メディポリス国際陽子線治療センター
福井県立病院
大阪陽子線クリニック
京都府立医科大学附属病院永守記念最先端がん治療研究センター
湘南鎌倉総合病院
北海道大学病院陽子線治療センター
札幌禎心会病院陽子線治療センター
北海道大野記念病院札幌高機能放射線センター
高井病院
兵庫県立粒子線医療センター付属神戸陽子線センター
岡山大学・津山中央病院共同運用がん陽子線治療センター
メディポリスがん粒子線治療研究センター

まとめ

陽子線治療は、がん治療における有効な選択肢の一つです。副作用が少なく、高い治療効果が期待できるため、多くの患者さんに希望を与えています。治療を検討されている方は、専門医にご相談ください。

参考資料

河内清光, 金井達明, 松沢秀夫 ほか「スポット走査法を用いた陽子線治療装置」『日本医学放射線学会雑誌』1982年 42巻 5号 p.467-475, 日本医学放射線学会
稲田哲雄, 早川吉則, 丸橋晃 ほか「高エネルギー垂直陽子線治療装置」『日本医学放射線学会雑誌』1984年 44巻 6号 p.844-853, 日本医学放射線学会
辻井博彦「陽子線治療の進歩と展望」『日本放射線腫瘍学会誌（The Journal of JASTRO）』1994年 6巻 2号 p.63-76, doi:10.11182/jastro1989.6.63, 日本放射線腫瘍学会
* 勝井邦彰, 沖本智昭, 金澤右「陽子線治療」『岡山医学会雑誌』2015年 127巻 2号 p.155-157, doi:10.4044/joma.127.155, 岡山医学会

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