震電

震電（しんでん）

震電は、第二次世界大戦末期に大日本帝国海軍によって開発された画期的な局地戦闘機です。特殊な前翼型の機体形状から「異端の翼」という愛称で呼ばれ、最高速度が400ノット（約740 km/h）を超えることが計画されていました。1945年6月に試作機が完成し、同年8月には試験飛行が実施されたものの、終戦を迎えてしまいました。

開発の背景

震電の開発は、1942年から1943年にかけて海軍航空技術廠で着手されました。技術大尉の鶴野正敬が、従来の戦闘機の限界を超えた革新的な機体を求めて前翼型戦闘機の構想を展開しました。また、源田実中佐も従来の零戦とは異なる新しい高速戦闘機の必要性を訴え、鶴野の構想に共感を持つことで震電の開発が進められました。

前翼型の設計は、エンジンやプロペラを機体後方に配置し、主翼の前に水平小翼を設けることで、機体のコンパクトさと空気抵抗の低減を図るものでした。これにより、従来の機体よりも高い速度性能が期待されました。

試作機の開発

1944年5月、震電の正式な試作が発令され、開発は急ピッチで進められました。九州飛行機は多数の工員を動員し、6,000枚を超える図面を短期間で作成・仕上げました。特に、連合軍のB-29爆撃機の迎撃を目的としており、戦術的には速力を生かした一撃離脱戦法が提案されました。

しかし、開発中にはアメリカ軍の空爆による工場の破壊や資材の不足も影響し、試作機の製造は遅延を余儀なくされました。1945年6月には試作1号機が完成し、試験飛行が行われましたが、エンジンに故障が発生しました。

試験飛行

試験飛行は1945年8月に実施されましたが、飛行中にプロペラの故障が起きたため、最終的な整備が行われる前に終戦を迎えてしまいました。試験飛行の結果は、機体の操縦性やエンジンの温度管理などに関する問題点が指摘され、改修の必要性が浮き彫りとなりました。

特徴

震電は、速度性能重視の設計がなされており、爆撃機迎撃専用に特化した機体でした。従来の戦闘機に求められる格闘能力は犠牲にされており、パイロットの好む運動性の高さとは対照的でした。電撃理論に基づく設計により、エアフローの特性にも配慮がなされました。

また、搭載される武装としては、主として30mm機銃を搭載し、防弾や爆撃能力にも重点が置かれていました。これにより、B-29爆撃機の迎撃任務を効果的に遂行できるよう計画されました。

現存機とレプリカ

戦後、震電は設計図や部品の多くが失われる中で、試作1号機だけが保管されました。その後、アメリカへ送られ研究に供されたものの、以降の運用には至りませんでした。近年、映画や展示で震電に基づいたレプリカが制作されており、その特異な形状と歴史的趣向が再評価されています。

震電の開発の経緯や性能は、日本の航空技術史の重要な一ページであり、歴史的な存在として今なお多くの人々に愛されています。

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