静賢

平安時代末期の僧侶、静賢：激動の時代を生きた後白河法皇の近臣

静賢（じょうけん）は、平安時代末期（1124年～没年不詳）に活躍した天台宗山門派の僧侶です。静賢法印とも称され、幼名は静憲でした。彼の父は、平安時代後期の政治家で知られる信西（藤原通憲）であり、母は高階重仲の娘という名家の子として生まれました。

静賢は、父・信西の政治的台頭によって、保元年間（1156～1159年）に急速にその名を知られるようになります。保元2年（1157年）には法橋に叙せられ、その後、法勝寺執行や最勝寺上座といった要職を歴任しました。しかし、平治の乱（1159年）で父・信西が討たれると、乱の当事者の一族として安房国（一説には丹波国）へ配流されます。この際に、父の俗名「憲」を避けるため、名を静賢と改めました。

配流後まもなく赦免され京に戻った静賢は、後白河法皇の側近として仕えるようになります。承安元年（1171年）、後白河院の命を受け、『後三年合戦絵詞』の作成に関わったと伝えられています。この絵詞は、奥州藤原氏と朝廷軍による後三年の役を描いた貴重な歴史資料として現在も知られています。

安元3年（1177年）に発生した鹿ケ谷の陰謀。この事件は後白河法皇の廃立を巡る陰謀でしたが、『平家物語』では俊寛、『愚管抄』では静賢が謀議が行われた山荘の持ち主として記されています。多くの院近臣が処罰されたこの事件において、静賢は関与の責任を問われることはありませんでした。しかし、安元3年（1177年）4月には、平清盛の命令により法勝寺執行を解任されています（『山槐記』）。この解任と鹿ケ谷の陰謀の関連性は、現在も不明な点として残されています。

同年11月には治承三年の政変が発生。このクーデターにおいて、静賢は後白河法皇から平清盛のもとへ、法皇が今後政務に介入しない旨を伝える使者として派遣されました。その後、後白河法皇が鳥羽殿に幽閉されると、静賢は兄弟の成範・脩範らと共に、法皇の身辺に出入りを許された数少ない側近の一人となりました。

治承・寿永の乱（1177～1185年）の時代、静賢は後白河法皇と武士との間を繋ぐ重要な役割を果たしました。平宗盛や源義仲との交渉、一ノ谷の戦いなど、数々の重要な局面において重要な役割を担っていたとみられます。建仁元年（1201年）8月に行われた和歌所初度影供歌合にその名が確認できますが、その後については記録がなく、没年は不明です。

静賢は、激動の平安時代末期を駆け抜けた、後白河法皇に仕えた重要な人物でした。その生涯は、歴史上の重要な出来事と密接に関わっており、現代においても歴史研究において貴重な存在となっています。彼に関する史料は断片的ですが、後世に残された絵詞や文献から、その人物像の一端を垣間見ることができます。今後の研究により、静賢の生涯についてより詳細な事実が明らかになることが期待されます。

系譜

父：藤原通憲（信西）
母：高階重仲の娘
妻：不詳
男子：源耀、顕耀

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