俊寛

俊寛僧都：悲劇の生涯と数奇な運命

俊寛（しゅんかん、1143年-1179年）は、平安時代後期の真言宗の僧侶です。村上源氏出身で、父は木寺法印寛雅、母は源国房の娘であり、八条院暲子内親王の乳母を務めた宰相局という名家の子として生まれました。姉には大納言局（八条院女房で平頼盛の妻）がいました。僧都の位を授かり、俊寛僧都と呼ばれた彼は、後白河法皇の側近として法勝寺執行を務めるなど、朝廷において重要な地位を占めていました。

鹿ケ谷の陰謀と流刑

安元3年（1177年）、俊寛は藤原成親、西光らと共に平氏打倒の陰謀、いわゆる鹿ケ谷の陰謀に加わりました。しかし、密告により陰謀は発覚し、俊寛は藤原成経、平康頼と共に鬼界ヶ島（薩摩国）へ流罪となりました。様々な説話が残されていますが、『源平盛衰記』では、成親が二人の殿上童、松の前と鶴の前の女性を介して俊寛を謀反に加担させたという興味深い描写が見られます。

鬼界ヶ島での流罪生活と最期

『平家物語』によると、鬼界ヶ島に流された俊寛らは、故郷を想う日々を過ごしました。成経と康頼は千本の卒塔婆を海に流すことで救いを求めますが、俊寛はそれに加わりませんでした。その後、一本の卒塔婆が安芸国厳島に流れ着き、これをきっかけに平清盛は恩赦を発布します。しかし、俊寛は謀議の首謀者とみなされ、赦免されず島に取り残されました。絶望の淵に沈んだ俊寛は、翌治承3年（1179年）、島を訪れた侍童・有王との再会後、娘からの手紙を受け取り、自ら命を絶つ決意をしました。そして、食を断ち、自害したと伝えられています。有王は俊寛の遺骨を京へ持ち帰りました。

流刑地の謎

俊寛の流刑地である鬼界ヶ島については諸説あります。『平家物語』の覚一本では硫黄島（鹿児島県三島村）とされていますが、延慶本では「油黄島」とも記され、喜界島、伊王島など様々な説が提唱されています。延慶本では、成経、康頼、俊寛の三人がそれぞれ異なる島に流されたとも記されており、俊寛の流刑地については白石島（宮古島説、宝島説、竹島説などがある）とする説もあります。現在では、硫黄島説が有力視されていますが、確証はありません。各島には現在も俊寛に関する史跡や伝承が残されています。

俊寛を題材とした作品

俊寛の悲劇的な生涯は、古今を通じて多くの芸術家にインスピレーションを与え、数々の作品が創作されてきました。能楽の世阿弥『俊寛』、近松門左衛門『平家女護島』、近代文学では倉田百三、菊池寛、芥川龍之介らが俊寛を題材とした作品を発表しています。これらの作品は、俊寛の苦悩や心情を様々な角度から捉え、解釈しています。また、北原白秋の長歌『伊王島』や、本條秀太郎の舞踊『俚奏楽 俊寛』など、多様な表現形式で俊寛の物語が伝えられています。さらに、NHK大河ドラマなど、テレビドラマにおいても繰り返し取り上げられています。

まとめ

俊寛僧都の生涯は、権力闘争の渦中に巻き込まれ、流刑の地に送られた悲劇的な物語です。しかし、その物語は、様々な解釈を生み出し、現在まで語り継がれ続けています。歴史的事実と文学的解釈が複雑に絡み合う俊寛の物語は、これからも多くの人々の心に響き続けることでしょう。

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