頼三樹三郎

頼三樹三郎：幕末の志士、その生涯と詩歌

頼三樹三郎（らいみきさぶろう、1825-1859）は、幕末を代表する儒学者の一人であり、著名な儒学者頼山陽の三男として京都で誕生しました。幼少期から優れた才能を示し、父をはじめ、後藤松陰や篠崎小竹といった当時の著名な儒学者に師事しました。

若き日の三樹三郎は、尊皇思想に傾倒。江戸での学問生活中に、寛永寺の石灯籠を破壊する事件を起こし、退学処分となりました。これは、幕府の朝廷に対する軽視政策への反発によるものだと考えられています。

その後、東北地方から蝦夷地（北海道）へと遊歴し、探検家の松浦武四郎と親交を深めました。米沢藩への訪問では、山鹿流古学・聖学者らと交流し、雪景色の峠を越える際に詠んだ詩「米澤雪中、大里峠を越ゆ」は、彼の感性の豊かさと詩才の高さを示すものです。

京都に戻った三樹三郎は、勤王の志士として活動を再開。母の後見を受けていましたが、母の死後、勤王運動にますます没頭するようになりました。米沢藩を再び訪れた際には、興譲館で地元の知識人たちと議論を交わし、勤皇の思想を深めていきました。

1853年のペリー来航を契機に高まる尊皇攘夷運動、そして1858年の将軍後継者争いの中で、三樹三郎は尊王攘夷の推進と徳川慶喜（一橋慶喜）の擁立を朝廷に働きかけました。この活動は、大老井伊直弼から危険視され、梅田雲浜、梁川星巌、池内大学らとともに危険人物とみなされることになります。梁川星巌の死には、三樹三郎が看取ったという逸話も伝わっています。

安政の大獄では、三樹三郎は幕府に捕らえられ、江戸で幽閉されました。福山藩主の侍講を務めていた父・山陽の愛弟子、石川和助による必死の助命嘆願もむなしく、橋本左内、飯泉喜内らとともに斬首刑に処せられました。享年35歳でした。

三樹三郎の死は、多くの志士たちに深い悲しみを与えました。彼の生涯は、激動の幕末期に理想を貫き通そうとした、一人の志士の生き様を鮮やかに描き出しています。彼の詩歌には、自然への深い愛情や、時代の変化への鋭い洞察が感じられ、今もなお人々の心に響き続けています。新潟県村上市の笹川にある「頼三樹三郎記念詩碑」には、彼が笹川流れの景観を詠んだ「海府遊記」が刻まれています。獄中で詠んだ詩歌は『骨董集』としてまとめられ、彼の強い意志と精神性を後世に伝えています。

三樹三郎に関する研究は、木崎好尚の『頼三樹傳』を始め、中村真一郎、安藤英男ら多くの研究者によって続けられています。これらの文献は、彼の生涯や思想を理解する上で貴重な資料となっています。彼が残した詩歌、そしてその生涯は、現代社会においても、歴史に学び、未来を考える上で重要な示唆を与えてくれるでしょう。

もう一度検索