馬路村

高知県安芸郡馬路村：山里の宝と独自の村づくり

高知県東部、1000メートル級の山々に囲まれた山間部に位置する馬路村は、人口わずか1000人余りの小さな村です。しかし、その規模の小ささとは裏腹に、独自の地域ブランド戦略と、自然と伝統を守り抜く姿勢で、全国的に注目を集める存在となっています。

自然豊かな地理と歴史

馬路村は、馬路地区と魚梁瀬地区の2つの地区から成り立っています。両地区は山々に阻まれ、行き来には北川[[村]]を経由する必要があります。村の面積の96％は山林で、その大部分は国有林です。甚吉森（1423m）を筆頭に、烏帽子ヶ森、天狗森など、雄大な山々が連なり、安田川や奈半利川が流れ、魚梁瀬湖といった景観も存在します。

山間部という地理的条件から内陸性気候ですが、黒潮の影響で雨が多く、日本屈指の多雨地帯としても知られています。魚梁瀬の雨量計による年間平均降水量は4000mmを超え、過去には観測史上2位となる日降水量を記録したこともあります。そのため、海岸部を基準とする天気予報は、馬路村では当てにならないことが多いです。

1889年に馬路村と魚梁瀬村が合併して現在の馬路村が成立しました。1964年には魚梁瀬ダムの建設に伴い、魚梁瀬地区が現在地に移転。旧集落は水没しました。その後、1979年には馬路温泉が開館し、1997年には山村留学制度が開始されるなど、時代の変化に合わせて発展を遂げてきました。

独自の地域ブランド戦略：馬路村農協と「おらが村方式」

馬路村の経済を支えているのは、第一次産業です。中でも、ユズを使った加工品は全国的に有名なブランドとなっています。周辺の農業協同組合が合併していく中、馬路村農業協同組合は単独で生き残りをかけ、「おらが村方式」と呼ばれる戦略を展開。村内販売所の整備、物産展への積極的な出展、通信販売の充実など、村を挙げてユズ加工品の販売に力を入れています。

当初は、見栄えの悪さから青果としての販売は低迷していましたが、1975年からユズ酢やユズジャムなどの加工品の生産を開始。1986年には主力商品「ごっくん馬路村」が誕生し、人気を博しました。テレビCMも放映され、その知名度は全国へと広がっていきました。売上高は1980年代から右肩上がりとなり、2005年には30億円を突破しています。

ユズ以外にも、魚梁瀬杉などの林業、シイタケ栽培、そしてユズ酢を使った田舎寿司など、様々な特産品があります。

活気ある地域社会と観光

馬路村には、馬路小中学校と魚梁瀬小中学校の2校の村立小中一貫教育校があります。また、馬路温泉やキャンプ場などの宿泊施設が充実し、森林鉄道の復元、ものづくり体験教室、村内案内ツアーなど、体験型の観光が盛んです。

金林寺の薬師堂（国の重要文化財）や、熊野神社（県指定文化財所蔵）、西川渓谷、東川渓谷、千本山（森の巨人たち百選）など、見どころも豊富です。毎年、魚梁瀬桜祭り、フェスティバル魚梁瀬、馬路納涼祭など、様々なイベントが開催され、地域を盛り上げています。

2003年から「馬路村特別村民」制度も実施しており、登録者には特別住民票の発行や広報誌の送付などの特典があります。2005年には、特別村民の人口が実際の人口を上回るほどの人気となっています。

交通面では、高知東部交通の路線バスが運行していますが、本数は少ないため、自家用車でのアクセスが困難な場所です。

馬路村は、小さな村ながらも、独自の地域ブランド戦略、豊かな自然、そして活気ある地域社会を融合させ、持続可能な発展を目指している、魅力的な村です。まさに、「日本で最も美しい村連合」に加盟するにふさわしい、日本の原風景がそこにあります。

もう一度検索