鳥インフルエンザ

概要

鳥インフルエンザ（Avian influenza, bird flu）は、主にA型インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。この感染症は主として鳥類、特に水禽類に影響を与えますが、このウイルスは人間や他の動物にも感染することがあります。鳥インフルエンザウイルスは多様で、HA（ヘマグルチニン）は16種類（H1～H16）、NA（ノイラミナーゼ）は9種類（N1～N9）存在し、これらの組み合わせにより、H1N1からH16N9までの144種類の亜型が存在します。

水禽類の腸内で増殖するインフルエンザウイルスは、ほとんどの場合、感染しても疾病を引き起こすことなく保住されています。しかし、このウイルスが他の鳥種、特に家禽などに感染することで、高病原性の変異株が生じ、養鶏業に甚大な影響を与えることがあります。

世界動物保健機関（WOAH）によると、2005年から2023年までの間に、高病原性鳥インフルエンザのために殺処分された家禽の数は約4億4,800万羽にのぼります。日本国内でも、発生した場合は迅速な殺処分が行われ、感染拡大を防ぐための対策が講じられています。

高病原性鳥インフルエンザのリスク

高病原性鳥インフルエンザ（HPAI）は、通常家禽在中で発生し、野生では見られません。しかし、家禽間で感染したHPAIが野生鳥類を介して拡大し、新たな感染源となることが懸念されています。このウイルスの例としてH5N1型がありますが、これが家禽から野生に感染することで、さらなる変異を引き起こします。

たとえば、2005年に最初に野生鳥にH5N1が感染し、アメリカ大陸に持ち込まれた後、養鶏場での感染が再確認されました。A型インフルエンザウイルスの管理は難しく、農場はウイルスを増幅させる危険性があるため、養鶏業界では高密度の環境が問題視されています。

人への感染

通常、鳥インフルエンザウイルスの人への感染は稀ですが、H5N1型やH9N2型のウイルスが感染した事例が報告されています。最も著名なケースは、1997年の香港でのH5N1型の流行であり、これ以降も人への感染が断続的に確認されました。2024年には、アメリカの養鶏場従業員約70名が感染の症状を示すという事件もあり、注意が必要です。

予防と治療

鳥インフルエンザに対するワクチンは開発されていますが、現状ではウイルスの感染を完全に防ぐことはできません。養鶏業界では、ウイルス感染が広まるのを防ぐために、発生地点付近の家禽を急速に殺処分することが主な対策とされています。また、ウイルスが変異した際の感染拡大に備え、インフルエンザ治療薬が使用される可能性があります。

今後の展望

今後、鳥インフルエンザウイルスが人に感染する能力を持つ変異が生じる危険性は依然として存在し、世界中で監視が続けられています。特に、野生鳥類や家禽の相互作用を通じて新型インフルエンザが発生するリスクに備え、各国の公衆衛生機関は警戒を強めています。2024年、WHOもH5N1型ウイルスの拡大について懸念を示しており、引き続きその動向に注意が必要です。

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