龍田大社

龍田大社：風の神を祀る古社

奈良県生駒郡三郷町立野南に鎮座する龍田大社は、古くから風の神として信仰を集める由緒ある神社です。式内社（名神大社）であり、二十二社（中七社）の一社にも数えられています。かつては龍田神社と呼ばれ、明治維新後の近代社格制度では官幣大社に列せられ、現在は神社本庁の別表神社として、その歴史と格式を今に伝えています。

祭神と信仰

龍田大社では、天御柱命（あめのみはしらのみこと）と国御柱命（くにのみはしらのみこと）の二柱の神々が祭神として祀られています。天御柱命は右殿、国御柱命は左殿に鎮座し、古くから龍田の風神として、広瀬の水神と並んで信仰を集めてきました。社伝などでは、天御柱命を級長津彦命（男神）、国御柱命を級長戸辺命（女神）と同一視する説もあります。龍田大社の信仰は、農耕や天候に左右される人々の生活に深く根ざしており、良質な風の恵みと豊作を祈る声が、古来より絶えることなく捧げられてきたと考えられます。

歴史と由緒

龍田大社の創建は、崇神天皇の時代まで遡ると伝えられています。当時、凶作と疫病が流行した際に、天皇が天神地祇に祈願したところ、夢の中で天御柱命と国御柱命を龍田山に祀るようのお告げを受け、創建されたと『延喜式』祝詞に記されています。

歴史書においては、『日本書紀』天武天皇4年（675年）4月10日の記述が初見となります。この記述では、勅使が遣わされ、風神が龍田立野に、大忌神が広瀬河曲に祀られたとあります。

『延喜式』神名帳（延長5年、927年）には、大和国平群郡に「龍田坐天御柱国御柱神社二座 並名神大 月次新嘗」と記載され、二座が名神大社として朝廷の月次祭・新嘗祭で幣帛に預かっていたことが明らかになっています。

明治維新後の1871年（明治4年）、近代社格制度において官幣大社に列格。1948年（昭和23年）には神社本庁の別表神社となり、現在に至っています。近年では、2020年（令和2年）6月に、龍田古道と亀の瀬と共に日本遺産に認定され、改めてその歴史的・文化的価値が広く認められました。

文化財と境内

龍田大社には、平安時代の作とされる宝相華彩絵奚婁鼓胴（ほうそうげさいえ けいろうこどう）が重要文化財に指定されています。また、かつては多宝塔が存在したことが、古絵図や写真などから確認されていますが、現存はしていません。

境内には、本殿（左殿・右殿）、拝殿、祝詞殿、神饌所などの主要な建物に加え、龍田比売命社、龍田比古命社、天照大御神住吉大神社、枚岡大神春日大神社、高望王妃社、白龍神社、龍田恵美須神社、三室稲荷神社、下照神社など、多くの摂社・末社が点在しています。広大な境内は、神聖な空気に満ち溢れ、訪れる人々を静謐な気持ちにさせてくれます。

アクセスと紅葉

龍田大社へのアクセスは、JR大和路線三郷駅、近鉄生駒線信貴山下駅から徒歩で可能です。特に秋の紅葉シーズンは、境内が鮮やかに彩られ、多くの観光客で賑わいます。紅葉の名所としても名高く、摂社龍田比売社の祭神である龍田姫は秋の女神とされ、古来より多くの歌に詠まれてきました。龍田大社は、歴史と自然、そして信仰が一体となった、見どころ満載の神社です。

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