ロロ

ロロ：ノルマンディー公国の創始者

ロロ（Rollo, 846年頃 - 933年）は、ノルマン人（ヴァイキング）の指導者で、洗礼名はロベール1世とも呼ばれます。彼は、後にノルマンディーとして知られる地域に公国を築いたことで歴史に名を残しました。その特異な体格から、馬に乗ると馬を潰してしまうほどだったため、常に徒歩で移動していたことから、「歩くロロ」（Ganga-Hrolf）という異名で知られています。

生涯

ロロはメール侯ログンヴァルドとヒルドの間に生まれ、母方の祖父と同じく「フロールヴ」と名付けられました。若くして東バルト海方面を襲撃するなど、ヴァイキングとして活動していましたが、故郷での略奪行為が原因でハーラル美髪王の怒りを買い、国外追放処分を受けます。

追放後、ロロは一族を率いてヘブリディーズ諸島へ渡り、その後フランス北岸に侵入し、略奪を繰り返しました。当時、ヴァイキングの襲撃に悩まされていた西フランク王シャルル3世は、ロロにエプト川からリール川の間の土地（現在のノルマンディー地方東部）を与える代わりに、ヴァイキングの侵入を防ぐよう提案しました。911年、ロロはシャルトルの戦いで大敗を喫しますが、同年晩秋にサン＝クレール＝シュール＝エプト条約を締結し、ノルマンディー地方を獲得し、シャルル3世の王女ジゼルと結婚、ノルマンディー公に叙任されます。

ロロは、贈り物への返礼として司教たちに国王の足に接吻するよう求めましたが、これを拒否し部下に代行させました。しかし、その部下は国王に跪く代わりに、国王の足を掴んで逆さまに持ち上げ、足にキスをしたと伝えられています。この逸話は、ロロをはじめとするノルマン人が主人を持たず、皆が対等であるという気風を表しているとされています。

条約締結から1年後、ロロはキリスト教に改宗し、当初は王との約束を守り、922年にはロベール家と戦いました。しかし、間もなく侵略を開始し、近隣諸国の領土を拡大し勢力を広げました。ロロの子孫であるギヨーム2世（ウィリアム1世）は、1066年のノルマン・コンクエストでイングランドを征服し、イングランド王となり、ノルマンディー公とイングランド王を兼任しました。その結果、現在のイギリス王室はロロの血を引くことになりました。

名称の変化

ロロという名前は、古ノルド語のフロールヴ（Hrólfr）に由来し、近代スカンディナヴィア語ではロールフ（Rolf）と呼ばれています。『デンマーク人の事績』では、フロールヴをラテン語でロルー（Roluo）と訳しています。ノルマン人は彼をルー（Rou）と呼び、フランク名のロドルフ（Rodolfus）やラドゥルフ（Radulfus）、フランス名のラウール（Raoul）へと変化していきました。

子女

ロロは、ポッパ・ド・バイユーとの間に以下の子供をもうけました。

ギヨーム1世（? - 942年） - ノルマンディー公
アデール（ゲロック）（912年 - 962年） - アキテーヌ公ギヨーム3世妃

正式に結婚したフランス王女ジゼルとの間には、確認されている子供はいません。

ロロの遺産

ロロは、ノルマンディー公国を築き、その子孫がイングランド王室の祖となったことで、ヨーロッパの歴史に大きな足跡を残しました。彼の生涯は、ヴァイキングの勇敢さ、政治的な手腕、そして文化的な変遷を象徴しています。また、彼の子孫は、ヨーロッパ各地で重要な役割を果たし、その影響は現代にも及んでいます。

参考資料

B.アルムグレン『ヴァイキングの歴史』蔵持不三也訳、原書房、1990年 ISBN 4-562-02101-2
G・キャンベル『ヴァイキングの世界』朝倉書店、1999年 ISBN 4-254-16656-7
スノッリ・ストゥルルソン『ヘイムスクリングラ 北欧王朝史（一）』谷口幸男訳、北欧文化通信社、2008年、ISBN 978-4-938409-02-9
R.プェルトナー『ヴァイキング・サガ』木村寿夫訳、法政大学出版局、1997年、ISBN 4-588-02182-6
* R.H.C.デーヴィス『ノルマン人』柴田忠作訳、刀水書房、1981年、ISBN 4-88708-027-1

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