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×記号：多様な意味と歴史を紐解く

「×」は、私たちにとって非常に身近な記号です。掛け算の記号として認識する人が多い一方で、否定や不正解を表すバツ印、チェックマーク、さらには地図上の目印など、様々な文脈で使用されています。この記号の多様な意味と歴史、そして文化圏による解釈の違いについて詳しく見ていきましょう。

1. 乗算記号としての「×」

数学において、「×」は乗算（掛け算）を表す記号として広く知られています。一般的には「かける」と読みますが、複数の乗算を区別する際には「クロス」と読むこともあります。

この記号の起源は、聖アンデレの斜め十字架に由来するとされ、乗法記号として用いられるようになったのは17世紀以降です。ウィリアム・オートレッドの著書『数学の鍵』(1648年)が最初期の使用例とされています。しかし、ヨーロッパではライプニッツが用いた「∙」の方が一般的でした。日本でも、中等教育以降は「∙」も併用されるのが一般的です。

なお、コンピュータプログラミングの分野では、ASCIIコードでも利用可能なアスタリスク（）が乗算記号として頻繁に使われています。

2. バツ印としての「×」

日本では、「×」は否定的な意味を持つバツ印として広く用いられています。「バツ」や「ペケ」と読み、正解・不正解を示す際や、否定、誤り、不可などを表す際に使用されます。これに対し、肯定的な意味を持つ記号は「○」（まる）です。

このバツ印の使用は、文字以前の古墳時代の土器や埴輪にも見られ、封印の意味を持っていたと考えられています。平安時代以降は「阿也都古（アヤツコ）」と呼ばれ、魔除けの記号として用いられていたという説もあります。

「ペケ」の語源については諸説ありますが、外来語の訛りや中国語の「不可」の読み方から来ているという説があります。韓国では、正解と不正解に○と×が使われることがありますが、「OX（오엑스）」と読み、日本語のような「マル」「バツ」といった読み方はしません。

3. その他の用法

「×」は、数学や否定の印以外にも、様々な場面で使用されます。

寸法表記: 縦×横、幅×高さといった形で寸法を表す。
拡大図・倍率: 「×30」は30倍の拡大図や30倍の倍率を持つレンズを表す。
対戦カード: 「A×B」で「A対B」の意味を表す。
カップリング: 「雄×雌」、「男性×女性」のように、カップリングや結婚、交配を表す。同人作品ではカップリングを表す記号としても使われます。
伏字: 「○」「●」などと同じく伏字として使われ、「チョメ」と読むこともあります。
チェックマーク: 申請書類やアンケートなどで、選択肢にチェックを入れる際に使用される。
ソフトウェアUI: 多くのウィンドウシステムで、ウィンドウを閉じるボタンとして使用されている。
* 俗語: 同じ言葉を繰り返すことを「-×n」のように略記する際に使用される。

4. 文化圏による違い

欧米では否定的な意味として「✗」や「○」が用いられることが多いですが、必ずしも「×」が否定を表すとは限りません。「✓」は肯定的な意味を持つ記号です。また、肯定・否定を問わず、チェックマークとバツ印の組み合わせ（tick and cross）がアイコンとして使用されることもあります。

まとめ

「×」記号は、乗算記号としての役割に加え、否定、チェックマーク、寸法表記など、多様な意味を持つ記号です。その歴史や語源、そして文化圏による解釈の違いを知ることで、この記号の奥深さ、そして多様性を理解することができます。 一見単純な記号の中に、豊かな歴史と文化が凝縮されていると言えるでしょう。

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