Ħ

Ħ（大文字）とħ（小文字）は、ラテン文字のHにストローク符号（横線）を付加した文字です。この文字は、主に以下の用途で使用されます。

マルタ語における使用

マルタ語では、この文字は無声咽頭摩擦音（IPA: [ħ]）を表すために用いられます。この音は、アラビア文字のح（ḥāʼ）に対応する音であり、喉の奥で摩擦を起こすように発音される特徴的な音です。

その他の用法

1. 国際音声記号 (IPA)
- 国際音声記号では、[ħ]という記号が、マルタ語と同様に無声咽頭摩擦音を表すために用いられます。この記号は、音声学や言語学において、音声を正確に記述するために不可欠です。

2. 量子力学におけるディラック定数
- 量子力学の分野では、小文字のイタリック体 ħ がディラック定数（換算プランク定数）を表す記号として用いられます。ディラック定数は、プランク定数（h）を2πで割ったものであり、量子力学において重要な役割を果たします。
- ディラック定数は、「エイチ・バー」と呼ばれることもあります。この記号は頻繁に使用されるため、専用の記号であるℏ（Unicode U+210F）やTeXの数式記号\hbarも用意されています。

3. 代用としての使用
- 小文字のħは、視覚的に類似していることから、キリル文字のЋ（Će）や土星の記号♄（♄）の代用として使われることがあります。特に、技術的な文書や数式において、これらの記号が不足している場合に、代用として用いられることがあります。

このように、Ħとħは、言語学、音声学、物理学といった異なる分野で、それぞれ異なる意味と役割を持っています。マルタ語における発音記号としての使用から、量子力学における物理定数まで、その用途は多岐にわたります。

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