“LAST GIGS”

BOØWY『LAST GIGS』：伝説のラストライブと、その後の歴史

1988年4月4日と5日、東京ドーム。日本のロックシーンに衝撃を与えたBOØWYのファイナルライブ「LAST GIGS」は、日本の音楽史に刻まれた伝説的イベントです。その模様を収めたライブアルバム『LAST GIGS』は、彼らの歴史と人気を決定づける重要な作品となりました。この記事では、アルバムの制作背景からリリース、そしてその後発表された関連作品まで、多角的に『LAST GIGS』を解説します。

解散の影と、最後のステージ

6枚目のアルバム『PSYCHOPATH』リリース後、すでに解散が決まっていたBOØWYは、全国ツアー「BOØWY ROCK'N'ROLL REVIEW DR.FEELMAN'S PSYCHOPATHIC HEARTS CLUB BAND TOUR」を実施。しかし解散の噂は広まり、写真週刊誌にも掲載され、大きな話題を呼びました。

プロデューサーの糟谷銑司は、解散を阻止する代わりに、ファンへの感謝を込めたラストライブを行うよう提案。メンバーは承諾し、12月24日の渋谷公会堂でのツアーファイナルで氷室京介から解散が発表されました。この発表は、チケットを入手できなかったファンによる騒動を引き起こすほど大きな注目を集めました。

翌年、東京ドームでの最終公演「LAST GIGS」が開催されることが決定。わずか10分で完売した9万5千枚のチケットは、その人気の高さを物語っています。このライブは、新しくオープンした東京ドームで日本人アーティストとして初となる大規模なロックコンサートとなりました。

ギターの音は聞こえない？舞台裏のエピソード

3月頃から始まったリハーサルは、解散宣言後初めてのメンバー全員集合。和気藹々とした雰囲気とは裏腹に、初日のリハーサルは想定外のトラブルに見舞われ、すぐに終了。ステージセットの問題で、氷室と布袋はモニターの音声が聞こえないことに不満を漏らしました。

初日の公演は、音響トラブルの影響もあり、メンバーの満足のいくものにはなりませんでした。そのため、深夜までリハーサルが続き、最終的には2日目の4月5日の公演の音質の方が格段によかったと言われています。

さらに、初日の公演には当時絶縁状態だった布袋の父親が会場に訪れており、チケットがなかったため会場の壁に耳を当ててライブの音を聞いていたというエピソードも。布袋はこの事実を父の死後、秘書から伝えられました。氷室はライブ当日の感情を「何とか泣かずにいなきゃ」と回想しています。

緊急制作と、異例の早期リリース

ライブからわずか1か月後という異例の速さでリリースされた『LAST GIGS』。制作期間の短さは関係者にとって信じられないほどだったと言われています。通常4か月かかる制作期間を短縮した理由は、チケットを入手できなかったファンのため、そしてライブの臨場感を損なわないためでした。

アルバムのミックス作業に立ち会った高橋まことによれば、スタジオにはエンジニアとディレクターしかおらず、メンバーは誰も来なかったとのこと。解散後、BOØWYメンバー全員が集まったのは、カメラマンの結婚式だけだったそうです。氷室はアルバムのリリースに際し、「出していいんじゃないですか」と軽く同意したと語っています。

選曲と、ライブの構成

『LAST GIGS』には、4月5日の公演から12曲が収録されています。全23曲のうち約半分であり、氷室のMCは全てカットされています。氷室は、前年の解散ライブでBOØWYは既に終わっていると語り、この公演はお祭りや同窓会のようなものだったと表現。高橋まことも同様の意見を述べています。

ライブでは、「B・BLUE」から始まり、「BAD FEELING」「DRAMATIC? DRASTIC!」といった代表曲、「ONLY YOU」「Dreamin'」といったバラードまで、BOØWYの代表曲を網羅したセットリストが組まれました。メンバー紹介では、氷室らしいユーモラスなコメントも飛び出し、ライブのエンターテインメント性が高められています。

批評家の評価：賛否両論、そして伝説化

『LAST GIGS』は、その存在意義について肯定的な評価が多い一方、音質については賛否両論があります。歴史的価値を重視するあまり、歓声が多く収録されている点が、聴きづらさにつながっているという意見も存在します。一方で、ライブの熱狂とエネルギーをリアルに捉えている点は高く評価されており、BOØWYの伝説化に大きく貢献した作品であるとされています。

そして完全版、さらにオリジナル音源へ

その後、2008年には全曲を収録した完全版『“LAST GIGS” COMPLETE』、2019年には4月4日と5日の両日分の音源を収録した『LAST GIGS -THE ORIGINAL-』がリリースされました。これらの作品は、当時のライブの熱気をより完全な形で後世に残すことに成功しました。

まとめ

『LAST GIGS』は、単なるライブアルバムではありません。BOØWYというバンドの軌跡、そして解散という決断、そしてファンへの感謝が凝縮された、まさに伝説の一夜を記録した作品です。音質や選曲に関する意見は分かれるものの、その歴史的意義と、BOØWYの音楽が持つ普遍的な魅力は、今も多くのファンを魅了し続けています。

もう一度検索