「犬神家の一族」オリジナルサウンドトラックとは？意味をやさしく解説

『犬神家の一族』オリジナルサウンドトラック：映画音楽の革新

1976年に公開された角川映画の第一弾『犬神家の一族』のオリジナルサウンドトラックは、当時の映画音楽の概念を大きく変える画期的な作品でした。映画が公開される前にサウンドトラック盤が発売されるという異例の展開や、従来の日本映画音楽の3倍もの予算が投じられたことなど、様々な点で注目を集めました。

革新的な映画音楽への挑戦

当時の日本映画では、映画音楽の地位は低く、予算も限られていました。角川春樹は、この状況を打破し、映画音楽の重要性を高めたいと考え、『犬神家の一族』では、当時最先端のフュージョンを手がけていた大野雄二を起用しました。大野は、ジャズを基盤にクラシック、ラテンなど多様な音楽スタイルを融合できる才能を持っており、映画音楽初挑戦ながら、その才能を遺憾なく発揮しました。

異例のプロモーション戦略

映画公開に先駆けて、主題曲「愛のバラード」がシングル盤としてリリースされ、その後、サウンドトラック盤が発売されました。これは、映画音楽が映画公開前に注目を集めるという、当時としては珍しい試みでした。映画館では、「愛のバラード」が繰り返し流れ、売店ではこの曲を求める人々で行列ができるほどでした。

サウンドトラックと映画本編の音楽の違い

映画本編では、サウンドトラック盤とは異なる印象の音楽が使用されています。これは、映画監督の市川崑の意向を受け、多重録音されたマルチテープから楽曲を編集し、映像効果に合わせて音楽を当てはめたためです。音響スタッフによる素材の加工によって、サウンドトラック盤と映画本編で異なる音楽体験を提供することに成功しました。

収録曲と音楽的特徴

サウンドトラックは全編インストゥルメンタルで構成されており、ジャズ、フュージョンを基調とした洗練されたサウンドが特徴です。

SIDE A

愛のバラード
怨念
呪い住みし館
仮面
終焉
愁いのプロローグ

SIDE B

憎しみのテーマ
瞑想
湖影
祈り（「愛のバラード」より）
受難の血
幻想
孤独（「愛のバラード」より）

2006年リリースのボーナストラックには、映画で使用された「愛のバラード」の別バージョンや、その他の楽曲が収録されています。

豪華なレコーディングスタッフ

レコーディングには、市原康（ドラム）、高水健二（エレキベース）、杉本喜代志（エレキギター）など、一流のミュージシャンが参加しました。コンダクターは、映画音楽指揮者の吉沢博が務め、レコーディングを支えました。

角川映画と横溝正史フェア

映画公開と同時に、「横溝正史フェア」と題した文庫本の売り出しも盛んに行われ、書店は映画ポスターや音楽で飾られました。このプロモーション戦略は、映画と書籍の両方の販売を促進し、相乗効果を生み出す狙いがありました。

映画音楽史における意義

『犬神家の一族』のサウンドトラックは、日本映画における映画音楽の可能性を大きく広げた作品として、その後の映画音楽に大きな影響を与えました。従来の映画音楽の概念を覆し、映画音楽が単なるBGMではなく、作品全体の質を高める重要な要素であることを示した点で、特筆すべき作品と言えるでしょう。

「犬神家の一族」オリジナルサウンドトラック