あかぎ (巡視船・初代)

海上保安庁巡視船「あかぎ」 (PS-40)：複雑な海域に対応する高速巡視船

「あかぎ」(JCG Akagi, PS-40) は、海上保安庁に所属する巡視船です。その任務は、主に那珂湊周辺の海域における海難救助です。この海域は、那珂川河口付近の複雑な潮流と波浪によって、航行が困難なことで知られています。そのため、「あかぎ」は、こうした特殊な海象条件下でも高いパフォーマンスを発揮できるよう、高度な設計と建造が施されました。

建造の背景

「あかぎ」の建造計画は、先に建造された「つくば」の経験を踏まえたものです。「つくば」は銚子漁港付近の海難救助を目的として建造されましたが、その経験から、同様の困難な海域である那珂湊周辺にも、より強力な巡視船が必要と判断されました。

「あかぎ」の設計においては、「つくば」よりも一回り大きな船体と、当時建造されたばかりの23メートル型巡視船（まつゆき型）を上回る高速性が求められました。これは、迅速な現場到着と、より効果的な救助活動を行うための必須条件だったからです。

優れた船体構造と推進システム

「あかぎ」の船体は、軽量化と高強度を両立させるため、革新的な素材が使用されました。船殻の肋骨、縦通材、甲板、横隔壁、上部構造物にはアルミニウム合金が採用され、外板には台湾ヒノキの二重張りが施されました。これにより、船体の軽量化と高い耐久性が実現しました。

推進システムには、池貝-MTU MB820Dbディーゼルエンジンを2基搭載。単機出力は1,100馬力に達し、この2基のエンジンによって、最高速度28ノットという、当時の海上保安庁の船艇中、最速の速度を実現しました。この高い速力は、緊急時の迅速な対応に大きく貢献しました。

V型船体と航海性能

「あかぎ」の船型は「つくば」と同じV型船体です。V型船体は、波浪による船体の揺れを軽減する効果があり、荒波の中でも安定した航行を可能にします。これは、複雑な海象条件下での航行を強いられる「あかぎ」にとって、極めて重要な要素でした。

まとめ

「あかぎ」は、日本の海上保安体制にとって重要な役割を担う巡視船です。その優れた航海性能と高速性は、那珂湊周辺の複雑な海域における海難救助活動に大きく貢献しました。高度な技術と設計思想が凝縮された「あかぎ」は、日本の海洋安全保障において、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。 その技術的な特徴や、現場での活躍は、後の巡視船の設計にも大きな影響を与えたと考えられます。 また、アルミニウム合金や台湾ヒノキといった素材の採用は、当時の造船技術の進歩を示すものでもあります。

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