ある勇気の記録

ある勇気の記録

『ある勇気の記録』は、1966年10月からNET（現・テレビ朝日）で放送されたテレビドラマです。全34回にわたり、毎週金曜の夜に放送されました。制作はNET、中国放送（RCC・TBS系列）、東映が共同で行いました。その後、続編として『挑戦者 続・ある勇気の記録』も制作・放送されています。

概要

原作は、中国新聞社報道部が1963年から1965年まで広島市と呉市を中心に取材・報道したノンフィクション作品『ある勇気の記録 -凶器の下の取材ノート-』です。この報道は、当時激化していた第二次広島抗争の最中、暴力追放キャンペーンとして行われ、その成果は1965年に第13回菊池寛賞を受賞しました。ドラマは、この報道活動を基に、実際に広島県で撮影されたセミドキュメンタリー作品です。

番組冒頭には、「この一篇を 暴力と斗い 暴力に勝った 広島市民にささげる」というテロップが表示され、作品のテーマを明確に示していました。

制作の経緯

当時人気を博していたNHKのテレビドラマ「事件記者」が終了したことを受け、複数の民放が出演者や作者の島田一男を引き継ぎ、「事件記者」の放送を継続しようと試みました。しかし、条件面で意見が分かれ、出演者と島田はNETとフジテレビに分かれることになりました。NET側には滝田裕介、近藤洋介、山田吾一、前田昌明、谷沢裕之、高城淳一、永井智雄、藤岡重慶、綾川香といった俳優陣が集結し、本作が制作されることになりました。

当時、広島県にはNET系列局が存在しなかったため、TBS系列局であるRCCが特例として制作に参加する形となりました。

キャスト

宮口キャップ：滝田裕介
村田記者：近藤洋介
若原記者：山田吾一
志摩記者：前田昌明
安倍記者：谷沢裕之
山崎デスク：高城淳一
岡田社会部長：永井智雄
大沢二課長：高松英郎
芥部長刑事：藤岡重慶
塩原刑事：綾川香

スタッフ

原作：中国新聞社報道部
プロデューサー：塙淳一、新井俊一郎
監督：山本薩夫、今村農夫也、鈴木敏郎 他
脚本：佐治乾、鈴樹三千夫 他
音楽：渡辺宙明
制作：NET、中国放送、東映テレビプロ

エピソード

第1回「誰のための街」は、第21回芸術祭奨励賞を受賞しています。

備考

撮影当時、広島ではまだ抗争が続いており、撮影への妨害が懸念されました。しかし、地元の暴力団組長が「自分の目の黒いうちは妨害はさせない」とスタッフに伝え、安心して撮影に臨むことができたといいます。また、第1話の試写会には、約70人の地元の暴力団員が見学に訪れたというエピソードも残っています。

当時中学生だった池上彰は、このドラマを見てジャーナリストを志すことを決意しました。彼のように、本作に影響を受けてジャーナリストを志した人々は少なくありません。しかし、『仁義なき戦い』と比較すると知名度は低く、ソフト化もされておらず、映像が現存しているかどうかも不明です。

広島県警察は当初、暴力団追放キャンペーンの一環として、本作の制作に協力していました。

関連作品

広島抗争
仁義なき戦い
事件記者 (テレビドラマ)
中国新聞社

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