いすみ市民バス

千葉県いすみ市が運営する「いすみ市民バス」は、地域住民の日常的な移動を支えるコミュニティバスです。市の公共交通網の中核を担っており、その運行業務は、主に小湊鉄道長南営業所大多喜車庫などが受託しています。

運行の背景

かつていすみ市内には、小湊鉄道、都自動車、千葉中央バスといった複数のバス事業者が一般路線を展開していました。しかし、自動車の普及（モータリゼーション）や地域での人口減少が進むにつれて利用者が減少し、これらの一般路線は全て廃止されるに至りました。この状況を受け、いすみ市は地域の公共交通を維持・確保するため、市が運行主体となり、廃止された路線の空白を埋め、公共交通が存在しない地域にもサービスを提供することを目的に、いすみ市民バスの運行を開始しました。現在、いすみ市内で運行されている路線バスは、この市民バスのみとなっています。

広義では後述するデマンドタクシーも含みますが、一般的に「いすみ市民バス」として案内されるのは、市内の路線を指す狭義の市民バスと、隣接する茂原市方面へ運行するいすみシャトルバスを合わせた全体を指します。いすみシャトルバスは、旧・夷隅町時代の2001年に、千葉中央バスの廃止区間の代替として運行が始まりました。一方、広く知られる市内路線は、いすみ市として発足後の2007年に運行が開始されたものです。

主な運行系統

いすみ市民バスは、主に以下の系統によって運行されています。

いすみシャトルバス

茂原駅と市役所夷隅支庁前などを結ぶ路線です。旧夷隅町が主体となり、千葉中央バスの茂原駅～苅谷橋間が廃止されたことを受け、地域住民が茂原市へ向かう交通手段を確保することを目的に2001年 3月1日に運行が開始されました。当初は1日4往復でしたが、2006年には5往復に増便されています。運行受託事業者は、2016年 4月1日からは小湊鉄道が担っています。主に通勤・通学での利用が多く、2009年時点では年間約3万人もの利用がありました。しかし、茂原駅方面へ向かう午前中の便が少ないことや、いすみ市から茂原駅方面へ向かう第一便が混雑し、立ち席での安全輸送に課題があるなど、利便性向上の余地が残されている現状です。

- 主な経由地: 茂原駅 - 工業団地入口 - 島 - 市役所夷隅支庁前 - 中川駅 - 増田橋

市内循環線

市役所大原庁舎を起点に、大原駅、三門駅、長者町駅、太東駅といったJR外房線沿線の主要駅や、いすみ医療センターなどを巡る路線です。いすみ市が運行主体となり、2007年 12月1日に実証運行が開始されました。当初は内回り・外回りそれぞれ1日8便が設定されました。実証運行期間中は、地域公共交通活性化協議会での議論や利用者の要望を踏まえ、ダイヤの見直しが重ねられ、利用者数は増加傾向を示しました。当初は他のコミュニティバスとの接続が考慮されていましたが、乗り継ぎ利用が少ないことや、JR外房線との接続が不十分であったため、2008年 12月1日の本格運行への移行時に時刻改正が行われ、JR線との接続が改善されました。本格運行移行後は、内回り7本、外回り6本に運行本数が見直されました。2015年10月1日からは土日祝日および年末年始の運行が休止され、朝晩を中心に運行本数の見直しが行われています。この系統の運行受託も小湊鉄道が行っています。

- 主な経由地: 市役所大原庁舎 - 大原駅 - 古日在 - 三門駅入口 - 長者町駅 - 太東駅 - 県道桑田交差点 - 市役所夷隅支庁前 - 国吉駅入口 - いすみ医療センター - 新田野駅 - 長志上 - 下布施 - シルバーガーデン入口 - 大原駅 - 市役所大原庁舎（内回り・外回りあり）

過去の運行系統（休止・廃止路線）

市内路線として2007年 12月1日に実証運行が開始された系統のうち、利用者が伸び悩み、実証運行期間の終了をもって運行を終了した系統があります。これには、夷隅巡回夷隅線、岬巡回音羽線・古沢線などが含まれます。

また、大原地区を巡回する以下の各路線も、2007年 12月1日に実証運行が開始され、2008年 12月1日に本格運行へ移行しましたが、2015年に全て運休となりました。これらの大原巡回系統は、HMC東京が運行を受託していました。

- 大原巡回（2015年運休）

東線
浪花線
大原線
東海線
大原・国吉線
布施線

デマンドタクシーによる補完

路線バスが運行されていない地域や、廃止されたバス路線の沿線を補う交通手段として、デマンドタクシーが運行されています。いすみ市のデマンドタクシーは、旧大原町域、旧夷隅町域、旧岬町域の3つのエリアに分かれて運行されており、原則として旧町域内での利用に限られます。ただし、いすみ医療センターとの間の利用に限り、町域をまたいでの利用が認められています。各エリアにはそれぞれ固有の愛称があり、大原地区は「おでかけおおはら」、夷隅地区は「どこでもいすme」、岬地区は「どこでもmeさき」と呼ばれています。このデマンドタクシーの運行は、京成バス千葉イーストいすみ営業所（旧・千葉中央バスいすみ営業所）に委託されています。

使用車両

いすみシャトルバスでは、専用のいすゞ・エルガミオ（ワンステップバス）が使用されています。一方、市内循環線では、本格運行への移行に伴い2009年に専用車両として日野・ポンチョ（ノンステップバス）が導入されました。本格運行以前の実証運行期間中は、小湊鐵道や都自動車が運行していた一般路線で使用されていた車両が暫定的に用いられていました。

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