いもフライ

佐野名物いもフライ：歴史、特徴、そして地域文化

栃木県佐野市を代表するご当地グルメ「いもフライ」。一口サイズの蒸かしジャガイモに衣をつけ、揚げたシンプルな料理ながら、その歴史と地域文化に深く根ざした魅力にあふれています。

戦後の屋台からソウルフードへ

いもフライの起源は、第二次世界大戦後、佐野市でリヤカーを引く行商人が販売を始めたことに遡ります。安価で手軽なジャガイモを、より食べやすく加工したいもフライは、当時の人々にとって貴重な栄養源でもありました。当初は佐野市内のみでしたが、その後、近隣の足利市や群馬県へと販路を拡大し、徐々に地域全体に広まっていきました。現在では、佐野市には専門店を含め約50軒もの販売店があり、県外からの観光客も訪れるほどの人気ぶりです。佐野市観光協会もいもフライマップを作成するなど、地域おこしに積極的に活用しています。

モチモチ衣と地元ソースのハーモニー

佐野いもフライの特徴は、なんといってもその衣にあります。小麦粉をベースにした、お好み焼きのような生地に少量のパン粉をまぶし、モチモチとした独特の食感を生み出しています。中には溶き卵や長芋を加える店もあり、それぞれの店が工夫を凝らしています。このモチモチとした重厚な衣は、冷めても美味しく食べられる秘密です。一方、周辺地域では、衣はカツレツに近いものが一般的です。

もう一つの特徴は、地元産のソースを使用する点です。足利市の月星食品の月星ソース、佐野市の半久食品工業のマドロスソース、早川食品のミツハソースなど、複数の地元メーカーのソースが用いられ、店によっては独自のブレンドソースも提供されています。この地元ソースとの組み合わせが、佐野いもフライ独特の風味を生み出していると言えるでしょう。

販売形態と地域における位置づけ

戦後間もない頃は、リヤカーでの販売が主流でしたが、1980年代以降は姿を消しました。現在では、小規模店舗での販売が一般的で、焼きそばなどのサイドメニューとして提供されることが多いです。八百屋、精肉店、駄菓子屋、スーパーマーケットの惣菜コーナーなどでも販売されており、祭りなどの露店でも見かけることができます。

佐野市では専門店も多く、いもフライは地域を代表する料理として定着していますが、足利市やその他の両毛地域では、サイドメニューとしての位置づけが一般的です。佐野市では見られない「ポテト入りやきそば」が足利市では人気です。これは、いもフライのジャガイモを焼きそばに混ぜたもので、戦後食糧難の時代に量を増やす目的で生まれたという説もあります。

栃木市では、「じゃがいも入りやきそば」あるいは「いも入りやきそば」が数十店舗で販売されています。販売価格は1本60円から80円程度と、手軽に購入できる価格帯も人気の秘密です。2022年には、ミニストップでも全国販売されるなど、いもフライは佐野市のみならず、広く認知される存在となっています。

文化としてのいもフライ

いもフライは、単なる食べ物としてだけでなく、佐野市の歴史や文化を語る上で欠かせない存在です。戦後の食糧事情や地域産業、そして人々の生活様式を反映した料理として、これからも地域に愛され、発展していくことでしょう。ゆるキャラ「さのまる」が、いもフライをモチーフにしたコスチュームを着ていることからも、その地域における重要性が伺えます。今後、いもフライがどのように進化し、人々に愛され続けていくのか、注目したいところです。

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