うめ (人工衛星)

日本初の実用人工衛星「うめ」

「うめ」(英称: Ionosphere Sounding Satellite, ISS)は、日本の宇宙開発事業団（NASDA）によって打ち上げられた、初めての実用人工衛星であり、主に電離層を観測する役割を担っています。当衛星の目的は、電離層の臨界電波周波数や電波の雑音源の分布を観測し、電離層上部のプラズマの特性や正イオン密度を測定し、その結果を短波通信の効率化のための電波予報に活用することです。加えて、1976年に開始された国際的な磁気圏観測計画（IMS）にも参加し、観測成果を科学コミュニティに提供することも目指しています。

開発の経緯

「うめ」の開発は、1966年に郵政省電波研究所により着手されました。最初はQロケットによる打ち上げを計画していましたが、その後のNASDAの発足に伴い、開発はNASDAに引き継がれました。最初の打ち上げ予定は1971年の夏でしたが、その後の計画変更により、1976年まで延びました。1970年には新たに「N-Iロケット」を使用することに決定し、その開発が行われました。

開発プロセスにおいては、まず1969年にメーカーとの契約を結び、続いてブレッドボードモデル（BBM）の制作が1970年3月までに完了しました。その後、エンジニアリングモデル（EM）、熱モデル（TTM）、構造モデル（MTM）の開発が行われ、プロトタイプモデル（PM）の設計が1972年に完了しました。最終的にフライトモデル（FM）が1975年9月に完成し、打ち上げの準備が整いました。

打ち上げと運用

「うめ」は1976年2月29日、種子島宇宙センターからN-Iロケット2号機によって打ち上げられました。初期の運用段階では、テレメトリーおよびコマンド系について正常であることが確認されました。その後、観測に必要なアンテナの展開が無事に行われ、観測機器の稼働が順次行われる予定でした。

しかし、打ち上げから約1か月後の1976年4月2日、全日照状態によりバッテリーの温度が許容範囲を超えて上昇し、故障が発生しました。このため運用は終了せざるを得ませんでした。ミッションの情報や目的は、後に打ち上げられる「うめ2号」に引き継がれています。

電離層観測の成果

「うめ」は短い間の運用でしたが、初期段階において電離層観測装置（TOP）を用いて7周回にわたってデータを取得しました。そのデータは電波研究所にて解析され、結果として初めて、電離層の臨界周波数の地球周回分布が明らかにされました。これにより、電離層に関するたくさんの重要な情報が世界の科学者たちに提供され、今後の研究に貢献することとなりました。

「うめ」プロジェクトは、日本の宇宙研究の重要な一歩として位置付けられ、後の衛星開発や観測に対しても多大な影響を与えてきたのです。

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