うらぎり者は去れ

トムとジェリー：裏切り者は去れ

1954年1月30日に公開された『トムとジェリー』の短編アニメーション作品『裏切り者は去れ』（原題：Posse Cat）は、アメリカ西部の開拓時代を舞台にした、陽気でスリリングな物語です。この作品では、おなじみのトムとジェリーに加え、彼らの主人であるガンマンが登場し、三者間のユーモラスなやり取りが展開します。

物語は、ガンマンがジェリーに食べ物を次々と盗まれることから始まります。ソーセージ、七面鳥のロースト、グレービーソースのかかったマッシュポテトなど、美味しそうな食事がジェリーの巧みな策略によって次々とジェリーの胃袋に収まっていくのです。

ガンマンの堪忍袋の緒が切れると、彼はトムに「ジェリーを捕まえるまで食事はなしだ！」と厳命します。普段から怠け者で、食事の時だけ活発になるトムは、ジェリー退治という困難な任務を課せられることになります。

トムはジェリーを捕まえようとしますが、食事への執着心が災いし、ことごとく失敗します。ジェリーのいたずらに翻弄され、ガンマンの怒りを買い、拳銃の乱射を浴びる羽目になる始末です。

窮地に陥ったトムは、意外な提案を受け入れます。それは、ジェリーが食事の半分をトムに与える代わりに、わざと捕まるという取引です。二匹は誓約書を取り交わし、トムはジェリーを捕まえたと見せかけて、ガンマンから褒められ、食事を手に入れます。

しかし、ジェリーはトムを出し抜きます。「これ、忘れた？」と誓約書を取り出し、トムの嘘を暴きます。激怒したトムは拳銃で誓約書を破り捨てますが、ジェリーはそれ以上に激怒します。

ジェリーはトムの顔に食事を投げつけ、トムは家畜用の焼印でジェリーに仕返ししようとしますが、勢い余ってガンマンの尻に焼印を押してしまいます。

怒り狂ったガンマンは、二丁拳銃を乱射しながらトムを追いかけます。地平線へと消えていくトムとガンマンを尻目に、ジェリーはゆっくりと七面鳥のローストを平らげるのでした。

この作品では、トムとジェリーの定番の追いかけっこに加え、西部劇特有の要素が巧みに取り入れられています。ガンマンの怒号、拳銃の音、そして広大な西部の大地といった背景が、物語に独特の雰囲気を与えています。

それぞれのキャラクターも魅力的です。怠け者で食いしん坊のトム、ずる賢く機転の利くジェリー、そして怒りっぽいがどこか憎めないガンマン。彼らの個性的な行動と、予測不能な展開が、視聴者を飽きさせません。

さらに、作品全体に流れるテンポの良さも魅力です。短い時間の中に、多くの笑いとスリルが凝縮されています。テンポの良い展開と、魅力的なキャラクター、そして西部劇の要素が見事に融合した、まさに『トムとジェリー』らしい作品と言えるでしょう。

この『裏切り者は去れ』は、何度見ても楽しめる、傑作短編アニメーションの一つです。トムとジェリーのコミカルなやり取りと、予想外の結末は、老若男女問わず、多くの人々に愛され続けています。西部劇の要素と、トムとジェリーのキャラクター性が絶妙に絡み合った、まさに必見の作品と言えるでしょう。

スタッフロールには、ウィリアム・ハンナ、ジョセフ・バーベラといった巨匠たちの名前がクレジットされ、彼らの高い技術と創造性が、この作品をさらに輝かせています。彼らの才能によって生み出された、忘れられない一編と言えるでしょう。監督はウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ、製作はフレッド・クインビー、音楽はスコット・ブラッドリーといった豪華なスタッフ陣によって制作されました。また、テクニカラーによる彩色と、ウェスタン・エレクトリックによる録音プロセスも、作品の高いクオリティを支えています。メトロ・ゴールドウィン・メイヤー・カートゥーン・スタジオ制作、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー配給という、当時を代表するスタジオによる制作も、この作品の魅力を高めています。

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