えりも型巡視船 (初代)

えりも型巡視船：老朽艦からの代替と性能向上

えりも型巡視船は、海上保安庁が運用していた巡視船です。1954年、旧海軍の海防艦5隻を受け継ぎ運用していたおじか型巡視船の後継として、1964年から建造されました。おじか型は老朽化が進み、更新が必要不可欠でした。特に、過酷な気象条件下での運用を担っていた気象観測船の更新は急務でした。その結果、まずのじま型巡視船が建造され、その後、警備救難任務を担う巡視船としてえりも型が建造されることになります。

設計と改良

えりも型は、気象観測を主任務とするのじま型をベースに、警備救難任務を主眼として設計されました。排水量はのじま型と同程度ですが、18ノット以上の高速を維持するため船体を7メートル延長し、一方で深さ・喫水を0.2メートル削減する工夫が施されました。

救難体制の強化も図られ、下甲板前部には便乗者室と医務室が配置されました。これは、ソ連抑留者引き取りといった事態も想定した設計でした。ネームシップである「えりも」は北方配備を想定し、耐氷構造の船体と、着氷による重心上昇を防ぐためのバラストタンク（排水量の13%の容量）を搭載しています。一方、「さつま」は南方配備のため、耐氷構造やバラストタンクは省略され、代わりに公室冷房が設置されました。両艦とも船体内部に減揺水槽を備えていました。

主機関には、2,400馬力の三井-B&W 635V2BU45ディーゼルエンジンを2基搭載。これは、海上保安庁の巡視船では珍しい2サイクル機関でした。また、機関区画に機関操縦室を設け、主機操縦盤や各種警報・計器類を集約。副発電機には自動危急停止装置を備え、無監視運転が標準でした。

前任の海防艦型巡視船と同様、3インチ単装緩射砲と70口径20mm単装機銃を搭載し、領海警備能力を有していました。ただし、3インチ砲は旧式化に伴い、運用後期には撤去されました。

運用と特徴

えりも型は、気象観測任務と警備救難任務の両方を高度にこなせるよう設計されました。耐氷構造、バラストタンク、減揺水槽などの装備は、それぞれの配備海域の厳しい自然条件に対応するための工夫です。また、機関操縦室や自動危急停止装置といった先進的な技術も取り入れられていました。

ただし、運用期間中には、主機関の老朽化や装備の更新といった課題も生じたと思われます。後継艦の導入とともに、その役割を終えて退役したと考えられます。

まとめ

えりも型巡視船は、老朽化した旧海軍艦艇からの更新、気象観測と警備救難の両立、そしてそれぞれの配備海域に合わせた設計など、海上保安庁の技術と運用思想の進化を示す重要な存在でした。その設計と装備は、当時の技術レベルの高さを示すと同時に、日本の領海警備における重要な役割を担っていたことを物語っています。今後の研究においては、運用記録や技術資料の分析を通して、より詳細な評価を行うことが期待されます。

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