おしどり右京捕物車
『おしどり右京捕物車』は、1974年4月4日から同年9月26日まで、TBS系列の木曜夜9時枠で放映された全26話のテレビ時代劇です。朝日放送と松竹株式会社が共同で制作を手掛けました。
作品概要
物語の主人公は、北町奉行所の凄腕与力であった神谷右京（中村敦夫）。悪に対して一切容赦せず、「北町の虎」と恐れられる存在でしたが、兇賊一味の卑劣な策略にはめられ、築き上げた地位や名誉だけでなく、身体の自由までも奪われ下半身不随となり、奉行所を追われます。さらに悪の手は、最愛の妻はな（ジュディ・オング）にも及び、彼女から職や住居、さらには身籠っていた子までをも容赦なく奪い去ります。
全てを失い、絶望の淵に突き落とされた右京でしたが、悪に対する強い憎悪を胸に秘め、妻はなの深い愛情と献身的な支えを得て、再び立ち上がることを決意します。坊主崩れである観念（下條アトム）が移動用に特製した「手押し車」と、過酷な鍛錬で身につけた鞭の技を武器に、「下請け与力」として悪人退治を請け負い、江戸に蔓延る巨悪を闇に葬っていく姿が描かれます。そこには、いかなる困難にも共に立ち向かう夫婦の究極的な愛の形が表現されています。
オープニングの口上は「人間本来無一物。砕けた足も追われた職も、所詮この世の塵芥（ちりあくた）」、「江戸は涙の吹き溜まり。死んだ子供と花一匁。花一匁で何を買う？」、「風に晒した生き様一つ。おしどり血車下請け与力。押して押させぬ横車」という、主人公の境遇や世相を強く反映したものでした。
特徴と関連作品
本作は、その独特な設定やハードな作風にいくつかの先行作品との共通点が見られます。
『鬼警部アイアンサイド』との類似性: 官憲としての立場を失い、下半身不随となりながらも、仲間（本作では妻や友人、協力者）と共に事件を解決するという基本プロットにおいて、アメリカのテレビドラマ『鬼警部アイアンサイド』との共通性が指摘されます。
『子連れ狼』の影響: 家族（特に妻はな）が単なる介助者ではなく、共に悪と闘う重要な存在である点、荒唐無稽ながらも凄惨でハードな物語展開、市井の弱い立場の人々が痛々しく虐げられる描写、そして特製の移動手段（手押し車）を駆使したアクションという点で、当時の人気劇画『子連れ狼』との共通要素が多く見出せます。演出陣には、『子連れ狼』の映画版を手掛けた三隅研次も名を連ねています。
また、本作はプロデューサーの山内久司をはじめ、『必殺シリーズ』のスタッフによって制作されており、元々は『助け人走る』の後番組として必殺シリーズに組み込まれる構想もあったとされています。このため、主題や演出など必殺シリーズと共通するテイストが随所に感じられます。
ユニークな設定
神谷右京の移動手段であり武器でもある「手押し車」は、観念が知恵を絞って製作したもので、自転車のハンドブレーキの原理が応用されており、小回りが利くように設計されています。また、近接戦闘に備えて刀が装備されているほか、右京が操る鞭の先端には刃物が仕込まれており、手押し車と鞭を組み合わせた独特のアクションが見どころとなっています。
「下請け与力」という仕事は、かつての同僚である北町奉行所の与力・秋山左之介（前田吟）が、奉行所では処理しきれないような事件を斡旋する形で成り立っており、仕事料は基本的に一両でした。
キャストとスタッフ
主演は、当時『木枯し紋次郎』で人気を博していた中村敦夫と、アイドルから脱却を図っていたジュディ・オングが務めました。プロデューサーの山内久司は、ジュディ・オングを妻はな役に起用した理由の一つとして、手押し車に座った右京と並んだ際に画面に収まりやすいよう、背丈が小柄であったことを挙げています。主要キャストには他に前田吟、下條アトムらが名を連ねています。
スタッフ面では、脚本は池田雅延（『暗闇仕留人』のオープニングナレーションも担当）らが、音楽は鈴木淳が担当。題字と毎回の漢字一文字のサブタイトルは、必殺シリーズと同様に糸見渓南が手掛けました。
主題歌は藤木竜が歌う「愛は夕日に燃えて」で、夫婦の絆を象徴するかのような楽曲がエンディングを飾りました。エンディング映像にはおしどりの姿が使用され、タイトル「おしどり」の由来を示しています。
制作エピソード
撮影が終盤に差し掛かった頃、主演の中村敦夫がテレビ番組の取材で約一ヶ月間キューバへ渡るため、番組を一時的に離れる出来事がありました。この期間、制作側は妻のはなや秋山をメインにしたエピソードを制作することで対応し、中村の不在を乗り切りました。
ソフト化
本作は、2003年にキングレコードからDVDソフトが発売され、その後2017年にはベストフィールドからHDデジタルリマスター版のDVD-BOXもリリースされています。放送当時の独特な世界観とハードなドラマは、現在も多くの時代劇ファンに語り継がれています。
作品概要
物語の主人公は、北町奉行所の凄腕与力であった神谷右京（中村敦夫）。悪に対して一切容赦せず、「北町の虎」と恐れられる存在でしたが、兇賊一味の卑劣な策略にはめられ、築き上げた地位や名誉だけでなく、身体の自由までも奪われ下半身不随となり、奉行所を追われます。さらに悪の手は、最愛の妻はな（ジュディ・オング）にも及び、彼女から職や住居、さらには身籠っていた子までをも容赦なく奪い去ります。
全てを失い、絶望の淵に突き落とされた右京でしたが、悪に対する強い憎悪を胸に秘め、妻はなの深い愛情と献身的な支えを得て、再び立ち上がることを決意します。坊主崩れである観念（下條アトム）が移動用に特製した「手押し車」と、過酷な鍛錬で身につけた鞭の技を武器に、「下請け与力」として悪人退治を請け負い、江戸に蔓延る巨悪を闇に葬っていく姿が描かれます。そこには、いかなる困難にも共に立ち向かう夫婦の究極的な愛の形が表現されています。
オープニングの口上は「人間本来無一物。砕けた足も追われた職も、所詮この世の塵芥（ちりあくた）」、「江戸は涙の吹き溜まり。死んだ子供と花一匁。花一匁で何を買う？」、「風に晒した生き様一つ。おしどり血車下請け与力。押して押させぬ横車」という、主人公の境遇や世相を強く反映したものでした。
特徴と関連作品
本作は、その独特な設定やハードな作風にいくつかの先行作品との共通点が見られます。
『鬼警部アイアンサイド』との類似性: 官憲としての立場を失い、下半身不随となりながらも、仲間（本作では妻や友人、協力者）と共に事件を解決するという基本プロットにおいて、アメリカのテレビドラマ『鬼警部アイアンサイド』との共通性が指摘されます。
『子連れ狼』の影響: 家族（特に妻はな）が単なる介助者ではなく、共に悪と闘う重要な存在である点、荒唐無稽ながらも凄惨でハードな物語展開、市井の弱い立場の人々が痛々しく虐げられる描写、そして特製の移動手段（手押し車）を駆使したアクションという点で、当時の人気劇画『子連れ狼』との共通要素が多く見出せます。演出陣には、『子連れ狼』の映画版を手掛けた三隅研次も名を連ねています。
また、本作はプロデューサーの山内久司をはじめ、『必殺シリーズ』のスタッフによって制作されており、元々は『助け人走る』の後番組として必殺シリーズに組み込まれる構想もあったとされています。このため、主題や演出など必殺シリーズと共通するテイストが随所に感じられます。
ユニークな設定
神谷右京の移動手段であり武器でもある「手押し車」は、観念が知恵を絞って製作したもので、自転車のハンドブレーキの原理が応用されており、小回りが利くように設計されています。また、近接戦闘に備えて刀が装備されているほか、右京が操る鞭の先端には刃物が仕込まれており、手押し車と鞭を組み合わせた独特のアクションが見どころとなっています。
「下請け与力」という仕事は、かつての同僚である北町奉行所の与力・秋山左之介（前田吟）が、奉行所では処理しきれないような事件を斡旋する形で成り立っており、仕事料は基本的に一両でした。
キャストとスタッフ
主演は、当時『木枯し紋次郎』で人気を博していた中村敦夫と、アイドルから脱却を図っていたジュディ・オングが務めました。プロデューサーの山内久司は、ジュディ・オングを妻はな役に起用した理由の一つとして、手押し車に座った右京と並んだ際に画面に収まりやすいよう、背丈が小柄であったことを挙げています。主要キャストには他に前田吟、下條アトムらが名を連ねています。
スタッフ面では、脚本は池田雅延（『暗闇仕留人』のオープニングナレーションも担当）らが、音楽は鈴木淳が担当。題字と毎回の漢字一文字のサブタイトルは、必殺シリーズと同様に糸見渓南が手掛けました。
主題歌は藤木竜が歌う「愛は夕日に燃えて」で、夫婦の絆を象徴するかのような楽曲がエンディングを飾りました。エンディング映像にはおしどりの姿が使用され、タイトル「おしどり」の由来を示しています。
制作エピソード
撮影が終盤に差し掛かった頃、主演の中村敦夫がテレビ番組の取材で約一ヶ月間キューバへ渡るため、番組を一時的に離れる出来事がありました。この期間、制作側は妻のはなや秋山をメインにしたエピソードを制作することで対応し、中村の不在を乗り切りました。
ソフト化
本作は、2003年にキングレコードからDVDソフトが発売され、その後2017年にはベストフィールドからHDデジタルリマスター版のDVD-BOXもリリースされています。放送当時の独特な世界観とハードなドラマは、現在も多くの時代劇ファンに語り継がれています。
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