おしゃべりオーケストラ

おしゃべりオーケストラ

『おしゃべりオーケストラ』は、1974年4月25日から1975年9月25日まで、およそ1年半にわたりNHK総合テレビジョンで生放送されたクラシック音楽に特化した番組です。

この番組の中心には、タレントの黒柳徹子さんがメインパーソナリティーとして立ち、指揮者の尾高忠明氏率いる東京フィルハーモニー交響楽団がレギュラー演奏を担当しました。番組の最大の特徴は、クラシック音楽を単に演奏・解説するだけでなく、毎回異なるテーマや切り口を設定して紹介した点にあります。音楽の専門家による演奏や解説はもちろんのこと、様々な分野からゲストを招き、多角的な視点から音楽の楽しさや奥深さを掘り下げました。

番組は、当初、毎月最終木曜日の20時30分から20時55分までの25分間、生放送で行われるのが基本でした。これは、同時間帯に放送されていた他の番組との兼ね合いで、20時台後半の約30分間を利用した編成でした。しかし、祝日や特別編成によっては、曜日や時間帯が変更されることもありました。例えば、1975年2月11日には火曜日の午後に『春を待つ増刊号』として放送され、同年6月29日には日曜日の午後に『初夏の臨時号』が放送されています。

取り上げられるテーマや楽曲は多岐にわたりました。番組開始当初には、ワルツの代表作である「美しく青きドナウ」やサン＝サーンスの「動物の謝肉祭」の一部が紹介されたほか、「喜歌劇・こうもり序曲」や「ラデツキー行進曲」といった親しみやすい管弦楽曲が取り上げられました。また、「声の特別号」と題してイタリア奇想曲を特集したり、唱歌や日本の歌謡曲（浜辺の歌、赤とんぼ、夜明けのスキャットなど）をクラシックのオーケストラで演奏したりと、バラエティに富んだ内容でした。年末には「もうすぐ新年号」として、映画音楽から「タラのテーマ」や「ある愛の詩」を取り上げるなど、クラシックの枠を超えた選曲も行われました。

1975年10月8日からは、番組の趣旨を引き継ぎつつ、番組名が『おしゃべり音楽会』と改題され、リニューアルされました。こちらは1976年3月24日までの放送で、原則として毎週水曜日の同時刻（20:30-20:55）に生放送されました。週ごとの放送となったことで、よりきめ細やかなテーマ設定が可能となり、「そらとぶアヒル号」「星のエチュード」「お国言葉でどうぞ」など、ユニークなサブタイトルがつけられた回が続きました。海外の歌手を招いた回や、特定の楽器（パイプ）や身近な話題（バス、味付け、足首）に音楽を関連付けた回もあり、多様な視点から音楽に触れる機会を提供しました。

『おしゃべりオーケストラ』そして『おしゃべり音楽会』で培われた、司会者とオーケストラが一体となって音楽を多角的に紹介するスタイルは、その後のNHKの音楽番組にも大きな影響を与えました。特に、1976年度から8年間続いた『音楽の広場』や、1984年度に放送された『徹子と気まぐれコンチェルト』といった番組は、この系譜を受け継ぎ、生放送で音楽の魅力を伝える役割を果たしました。

両番組は、クラシック音楽を身近なものとして、幅広い視聴者に届けるための意欲的な試みであり、その後の音楽番組のあり方にも影響を与えたと言えるでしょう。

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