おどる亀ヤプシ

UNICORN - おどる亀ヤプシ

『おどる亀ヤプシ』は、日本のロックバンドUNICORNが1990年11月1日にリリースした初のミニアルバムです。CBS・ソニーから完全限定生産盤として発売され、3か月連続アルバムリリースの第2弾として、前作『ケダモノの嵐』からわずか1か月後に届けられました。

制作の背景

本作は、メンバー全員（西川幸一を除く）が作詞・作曲を手掛け、前作に引き続きバンド自身によるセルフ・プロデュース作品です。特徴的なのは、自作曲を外部のアレンジャーに委託するというコンセプトで制作された点です。これにより、民族音楽やボサノヴァなど、従来のUNICORNの音楽性とは一線を画す、多様な音楽性が取り入れられました。

また、「母と子のためのアルバム」として企画されたことも、本作の大きな特徴です。絵本を意識した装丁からも、そのコンセプトが伺えます。

音楽性と特徴

本作からはシングルカットされた楽曲はありませんが、4枚目のシングル「命果てるまで」のカップリング曲「PTA〜光のネットワーク〜」がアルバム・バージョンとして収録されています。

オリコンアルバムチャートでは最高位2位を獲得し、20万枚を超える売り上げを記録。日本レコード協会からゴールド認定を受けています。しかし、批評家からは、その実験的な側面や、従来の音楽性とは異なる「変な曲」が多いことが指摘されました。

レコーディング

レコーディングは、日本国内のサウンド・イン・スタジオおよびテイク・ワン・スタジオに加え、ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオでも行われました。これは、UNICORNにとって初の日本国外レコーディングとなりました。

海外でトラックダウンを行った理由について、メンバーはそれぞれ以下のように語っています。

手島いさむ：「知らないことを知るのは、なんにしても有益だと思います」
阿部義晴：「ミュージシャンとしての自然なながれ。勉強」
堀内一史：「いろいろなスタッフとやってみたかった」
奥田民生：「ジョーという外人がえらいのと、買物ができる」
* 西川幸一：「おどる亀ヤプシは外人かと思ったので」

楽曲について

初恋

堀内一史が制作した楽曲で、小学生を主人公にしたコンセプト・アルバムであることを示唆しています。ワールドミュージックの要素を取り入れた、過去のUNICORNにはない一面を見せています。

ママと寝る人

ビッグバンドをバックにしたスパイ映画のようなジャズナンバー。阿部義晴らしい変拍子や北欧風ギターソロが特徴的です。

12才

チンドン風のレトロな3拍子の曲で、中学受験を目指す小学生の辛さを歌っています。奥田民生の苦しそうな高音ボーカルが、歌詞の悲痛さを際立たせています。

ボサノバ父さん

奥田民生が中山忍に提供した曲のセルフカバー。人生の一コマを切り取ったような歌詞が、奥田民生の才能を感じさせます。

PTA〜光のネットワーク〜

当時の光GENJIとTM NETWORK|TM_NETWORKをパロディ化した楽曲。特にTM NETWORK|TM_NETWORKの「Self Control (方舟に曳かれて)」や「Get Wild」に酷似しており、奥田民生は宇都宮隆のモノマネで歌っています。ライブでは、再結成後のツアー「蘇える勤労」で初めて披露されました。

俺の走り

和楽器パーカッショニスト仙波清彦による、はにわ隊を使った和打楽器アレンジが特徴的な楽曲。アンクルンという竹製の音階打楽器をフィーチャーした、エスノポップ風のナンバーです。

リリースと評価

本作は、サイン帳サイズの絵本付特製パッケージ仕様で、飛び出す絵本としても楽しめる、子供向けの趣向を凝らした装丁でリリースされました。批評家からは、実験的な音楽性や、従来のUNICORNとは異なる楽曲構成について、賛否両論の評価が寄せられました。

まとめ

『おどる亀ヤプシ』は、UNICORNの音楽的な実験精神と、遊び心が詰まった異色作です。従来のファンはもちろん、新たなリスナーにも、UNICORNの奥深さを感じさせる一枚と言えるでしょう。

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