おはようエクスプレス・おやすみエクスプレス

JR西日本が北陸本線で運行していた特別急行列車「おはようエクスプレス」と「おやすみエクスプレス」は、平日朝夕の通勤・通学需要に応えるため設定されました。これらの列車は、北陸新幹線の延伸に伴い、その運行区間や形態を変えながらも、長らく地域の重要な足として機能してきましたが、2024年 3月15日の北陸新幹線敦賀延伸をもって廃止されました。

運行の開始と発展

「おはようエクスプレス」の歴史は、2001年 10月1日に始まります。この時、平日朝に運行されていた快速列車を特急列車に格上げする形で、福井発金沢行きの臨時列車として設定されました。好評を受けて、翌2002年3月には定期列車となり、新たに富山発金沢行きの列車も登場するなど、運行ネットワークが拡大しました。

さらに、夜間の帰宅需要に応えるため、2003年3月には金沢発福井行きの「おやすみエクスプレス」も運行を開始しました。

変遷する運行区間と停車駅

これらの列車は、その運行期間を通じて、利用状況や他の列車との兼ね合いにより、運行区間や停車駅が度々見直されました。

当初福井駅と金沢駅の間で運行されていた「おはようエクスプレス」は、後に富山県内の富山駅や泊駅まで区間を延長した列車も登場しました。また、七尾線経由で七尾駅から金沢へ向かう臨時列車も設定されました。七尾線系統や富山県内を走行していた時期は、停車駅も現在と異なり、津幡駅や小杉駅に停車する列車も存在しました。

しかし、2010年3月には七尾線系統が廃止。2015年 3月14日には、北陸新幹線の金沢開業により富山県内の並行在来線区間が第三セクターに移管されたため、富山県内の運行も終了しました。これにより、「おはようエクスプレス」は福井発金沢行きに短縮され、「おやすみエクスプレス」も金沢発福井行きの運行形態となりました。

その後、北陸新幹線敦賀延伸を控えた2019年 3月18日には、運行区間が福井駅発着から敦賀駅発着に変更されました。これは、新幹線開業後もJR西日本が運行を担う敦賀駅 - 金沢駅間における特急体系を見据えた動きでした。

最終期の運行形態と停車駅

廃止直前の2024年3月時点では、北陸本線の敦賀駅 - 金沢駅間で運行されていました。運行本数は、「おはようエクスプレス」の敦賀発金沢行きが1本（敦賀6時台発）、そして「おやすみエクスプレス」の金沢発敦賀行きが1本（金沢21時台発）の合計1往復でした。これらの列車は、通勤・通学特急としての性格から、土曜日・日曜日・祝日は終日運休となっていました。

最終期の停車駅は以下の通りです。

敦賀駅 - 武生駅 - 鯖江駅 - 福井駅 - 芦原温泉駅 - 大聖寺駅 - 加賀温泉駅 - 小松駅 - 金沢駅

使用車両

運行開始当初から廃止まで、一貫してJR西日本の金沢総合車両所に所属していた681系または683系電車が使用されました。これらの車両は、他の特急列車「サンダーバード」や「しらさぎ」などにも使用された北陸本線系統の主力特急形電車です。

「おはようエクスプレス」「おやすみエクスプレス」では、主に3両編成で運行されました。車内設備は全車両が普通車の自由席となっており、指定席やグリーン車の設定はありませんでした。これは、短距離の利用や急な利用にも対応しやすいよう配慮されたためと考えられます。

沿革

2001年 10月1日：「おはようエクスプレス」が福井発金沢行きで臨時運転開始。
2002年 3月23日：平日定期列車に昇格。富山発金沢行きも新設。
2003年 3月15日：「おやすみエクスプレス」金沢発福井行き運行開始。
2004年3月13日：七尾線からの臨時「おはようエクスプレス」設定。福井発が臨時富山行きに延長。
2007年 3月18日：車内全面禁煙化。
2010年3月13日：七尾線系統の「おはようエクスプレス」廃止。
2015年 3月14日：北陸新幹線金沢延伸に伴い、富山県区間での運行終了。泊駅・富山駅発の「おはようエクスプレス」が廃止され、福井発は金沢行きに短縮。
2019年 3月18日：運行区間を敦賀駅発着に延長。
2024年 3月15日：北陸新幹線敦賀駅延伸に伴い廃止。

まとめ

「おはようエクスプレス」および「おやすみエクスプレス」は、北陸本線の主要都市間を結び、通勤・通学をはじめとする地域内輸送を特急列車として担った重要な存在でした。約22年半にわたる運行期間の中で、区間や停車駅、運行形態は変化しましたが、平日利用者の利便性向上に貢献しました。北陸新幹線の延伸により、その役割は終えましたが、北陸地方の鉄道史にその名を刻みました。

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