おふさ観音

おふさ観音

おふさ観音は、正式名称を十無量山観音寺と称し、奈良県橿原市小房町に位置する高野山真言宗の別格本山の寺院です。山号は十無量山、本尊には十一面観世音菩薩を祀っています。大和三山の耳成山と畝傍山のほぼ中間地点にあたる場所にあり、特に境内に咲き誇る豊富なイングリッシュローズから、「花まんだらの寺」として多くの人々に親しまれています。

歴史

当寺の起源は、江戸時代初期の慶安3年（1650年）4月に遡ると伝えられています。この地にあった鯉ヶ淵という池から、白い亀の背に乗った観音菩薩が現れたのを発見した付近の娘、おふさが、小さな御堂を建立したことが始まりとされています。その後、比叡山延暦寺北谷の観音院から十一面観音像を譲り受け、これを本尊として安置しました。

現在の本堂は、明治時代に一般の人々の篤い寄進によって再建されたものです。また、元禄3年（1690年）に造られた梵鐘がありましたが、残念ながら第二次世界大戦中の昭和19年（1944年）、国の金属類回収命令により供出され、失われてしまいました。

境内と花まんだら

境内には、明治期に再建された本堂を中心に、金毘羅尊社、庫裏などの堂宇が点在しています。風情ある亀の池を中心とした庭園「円空庭」や、茶房おふさ、茶室「禿亀庵」、一露庭といった癒しの空間も設けられています。また、本尊を祀る本堂のほか、大師堂、恵比寿尊社、三宝荒神堂などがあります。

特筆すべきは、本堂の左右に配置された西諸尊堂と東諸尊堂です。西諸尊堂には、玉置の大神、愛染明王、弁財天の「西の三体様」が、東諸尊堂には、地蔵菩薩、正市井稲荷大明神、弥勒尊石、福の神の「東の四体様」がそれぞれ祀られています。

そして、当寺を象徴するのが広大なバラ園を含む「花まんだら」の世界です。参拝に訪れる人々をもてなすため、イングリッシュローズを中心に約3,800種、およそ4,000株ものバラが植栽されています。これに加えて、クレマチスやハーブといった様々な植物も境内に彩りを添えています。

これらの花のほとんどは鉢植えで丁寧に管理されており、バラまつりの期間だけでなく、季節ごとの他の行事に合わせて配置が換えられることがあります。訪れる人々が花の美しさだけでなく、その香りも十分に楽しめるよう、花々の間には細やかな通路が設けられています。寺では、境内一面に咲く花々で曼荼羅の世界を表現していることから、これを「花まんだら」と名付けています。

札所

おふさ観音は、以下の様々な霊場や札所にも名を連ねています。

大和ぼけ封じ霊場
大和七福八宝めぐり（恵比寿天担当）
大和十三仏霊場の第八番
大和北部八十八ヶ所霊場の第七十九番

年間行事

季節ごとに多様な行事が開催され、多くの参拝者で賑わいます。

恵比寿大祭：1月中旬
春の大祭：4月17日、18日
バラまつり：春（5月15日～6月30日）、秋（10月19日～11月30日）
風鈴まつり：7月1日～8月31日
夏祭り：7月17日
ボケ封じ大祭：9月15日（安倍文殊院と隔年交代で担当、西暦末尾が奇数年の年におふさ観音で開催）
秋の大祭：10月17日、18日

交通アクセス

公共交通機関を利用する場合、以下の経路が便利です。

JR桜井線 畝傍駅より徒歩約10分。
近鉄八木西口駅より徒歩約12分。
近鉄大和八木駅からは、奈良交通バス（「菖蒲町四丁目」「湯盛温泉杉の湯」「大淀バスセンター」「下市町岩森」行き）に乗車し、「小房（おぶさ）」バス停で下車後、徒歩約5分です。

色彩豊かな花々と歴史あるたたずまいが調和するおふさ観音は、訪れる人々に安らぎと感動を与えてくれるでしょう。

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