おめがクラブ

おめがクラブ

おめがクラブは、戦後の日本におけるSF（サイエンスフィクション）同人グループの先駆けとして知られています。この団体は、1955年頃に設立され、主要なメンバーには渡辺啓助、今日泊亜蘭、矢野徹などが名を連ねていました。おめがクラブが発行した同人誌『科学小説』は、日本のSF同人誌の中でも初期の重要な作品と位置付けられています。

設立の背景

おめがクラブの始まりは、いくつかの著名な探偵小説作家たちが定期的に開いていた喫茶店での会合から派生しています。会合には今日泊亜蘭、日影丈吉、大坪砂男が参加し、やがて科学小説について熱く語り合うようになりました。この流れを受けて、矢野徹の提案により同人誌を作成することが決定されました。また、グループ名「おめがクラブ」は今日泊のアイデアによるものです。

最初は香山滋に代表を依頼したものの、彼はこれを断ったため、渡辺啓助が代表として活動を始めました。しかし、グループ内での意見の違いから、大坪が不満を抱き脱退するなど、メンバー間の関係には多少の波乱もありました。また、矢野の推薦で新たに星新一や柴野拓美といった著名な作家がメンバーに参加しました。

同人誌『科学小説』

1957年11月には、初号となる『科学小説』が刊行されました。この雑誌はただの同人誌ではなく、商業媒体への作品売り込みを意図した原稿の展示誌として位置づけられていました。この目的は確かに達成され、実際に今日泊の作品「完全な侵略」が雑誌『宝石』に掲載されるなど、数件の商業出版につながる成果がありました。

1960年1月には待望の第2号が発行されましたが、これが最終号となり、その後おめがクラブは活動を終了しました。今日泊によると、渡辺が自身のファンを同人に加えたことが他のメンバーの反感を買った一因とも言われています。

メンバーの顔ぶれ

おめがクラブのメンバーは非常に多彩で、『科学小説』第2号では以下の作家が名前を挙げられています:
渡辺啓助
今日泊亜蘭
矢野徹
星新一
柴野拓美
夢座海二
丘美丈二郎
潮寒二
槇悠人
埴輪史郎
阿部主計
富田百秋
浅美哲夫
斉藤哲夫
中村義之
葉瀬潤子

これらのメンバーは、様々なジャンルで才能を発揮し、個々の作品から日本のSF文学に大きな影響を与えました。

発表された作品

『科学小説』には、多くの興味深い作品が収められています。第1号では、以下の作品が含まれていました:

• - 「ミイラは逃走する」渡辺啓助
• - 「誘導弾X5号と二匹の子猿」矢野徹
• - 「完全な侵略」今日泊亜蘭
• - 「ホモ・ハイメノプテラ」潮寒二
• - 「電波公聴機」丘美丈二郎
• - 「人工子宮（原名母）」アルフレッド・コッペル（永谷近夫訳）
• - 「万ケ一の脅迫」浅見哲夫
• - 「惑星一一四号」夢座海二

第2号では、次のような作品群が紹介されました:

• - 「みなごろしの歌」渡辺啓助
• - 「見張りは終った」今日泊亜蘭
• - 「冬の蝶」星新一
• - 「明日のアリバイ」夢座海二
• - 「ポンコロ部隊」矢野徹
• - 「ポシブル・ケース」丘美丈二郎
• - 「雪男族の神々」葉瀬潤子
• - 「宇宙生物誌」斉藤哲夫
• - 「古今からくり人形」槇悠人
• - 「島」中村義之

結論

おめがクラブは短期間ながらも、日本SF界に大きな影響を与えました。特に『科学小説』は、後のSF同人誌や作家に多くのインスピレーションを与え、今なおその功績は評価されています。おめがクラブの誕生と活動は、日本の文学における重要な一ページとなっています。

もう一度検索