お田鶴の方

お田鶴の方：戦国時代の女武者

お田鶴の方（おたづのかた）は、戦国時代に生きた女性で、飯尾連龍（いいおれんりゅう）の妻として知られています。彼女は、夫の死後、自ら城を守り抜き、徳川家康の軍勢と激戦を繰り広げ、壮絶な最期を遂げたことで、後世に「烈女」「女武者」として語り継がれています。

生涯

出自

お田鶴の方の出自については、いくつかの説があります。『鵜殿家史』には、三河国上ノ郷城主・鵜殿長持（うどのながもち）の娘として記されています。また、母親は今川氏親（いまがわうじちか）の娘であり、今川義元（いまがわよしもと）の妹または義妹にあたるとも言われています。もしそうだとすれば、母方の祖父は今川氏親、祖母は寿桂尼（じゅけいに）、伯父は今川義元、伯母は北条氏康（ほうじょううじやす）の正室・瑞渓院（ずいけいいん）となります。

しかし、近年の研究では、鵜殿長持の娘とされる西郡局（さいごうのつぼね）は鵜殿氏の分家であり、お田鶴の方とは姉妹ではないとされています。また、今川氏親の娘とされている点についても、黒田基樹の研究により、鵜殿長持室や関口氏広室の実在は確認できず、後世の誤認または創作である可能性が高いと指摘されています。そのため、築山殿（つきやまどの）との血縁関係も疑問視されています。

夫・飯尾連龍の死

お田鶴の方の夫である飯尾連龍は、今川氏真（いまがわうじざね）に徳川家康への内通を疑われ、殺害されました。この連龍の死についても諸説存在します。

その後

連龍の死後、遠州引馬（とおとうみひくま）の家臣たちは騒動となり、家老の江間泰顕（えまやすあき）と弟の時成（ときなり）が流浪することになります。泰顕は武田氏に、時成は徳川氏に内通しようとしますが、泰顕が時成を殺害し、その後、泰顕は時成の家来に討たれてしまいます。

お田鶴の方は、夫の無念を晴らすため、曳馬城（ひくまじょう）に籠城します。彼女は、飯尾氏に謀反の心がないことを訴えましたが、家臣たちは依然として徳川派と武田派に分裂したままだったとされています。

曳馬城の戦い

永禄11年（1568年）12月、徳川家康が曳馬城を攻めました。この時の様子については、様々な記録が残されています。

お田鶴の方が防戦を指揮し、侍女たちと共に奮戦しましたが、討ち死にしたとする説。
時成、泰顕と共に城を守っていましたが、落城時に侍女とともに討ち死にしたとする説。
家康が使者を送り、城を明け渡せば妻子共々面倒を見ると言いましたが、お田鶴の方は拒否したため、家康が攻め込みました。城兵の奮戦により家康軍は一時敗退しましたが、再び攻め込まれ、お田鶴の方は侍女たちと共に討ち死にしたとする説。
家康は降伏を勧めたものの、お田鶴の方が応じなかったため、城を攻めました。お田鶴の方は次男と共に最後まで戦い、討ち死にしたとする説。
お田鶴の方が緋縅（ひおどし）の鎧をまとい、薙刀を振るい、侍女たちと共に突撃しましたが、全員が討ち死にしたとする説。
お田鶴の方は、今川氏の出身であったため、人質として駿河に行ったとする説。

これらの記録から、お田鶴の方が、城を守り抜き、最後まで戦い抜いた勇猛な女性であったことが伺えます。

伝説

お田鶴の方の最期については、伝説も残されています。

椿姫観音の伝説では、お田鶴の方の戦死後、遺骸が埋められた場所に椿の木が植えられ、そこは「椿塚」と呼ばれるようになりました。後に椿の花が咲き乱れ、お田鶴の方を祀った小祠が建てられたとされています。
また、お田鶴の方は、美しいだけでなく、男勝りの気性を持っており、城の侍や町民にも慕われていたと伝えられています。家康の降伏勧告を拒否し、勇猛に戦い、壮絶な最期を遂げたことから、人々に深く惜しまれたといいます。

その他

『武徳編年集成』には、飯尾連龍が今川氏真に疑われ襲撃された際、お田鶴の方が奮戦したという記録が残っています。
お田鶴の方が「椿姫」と呼ばれるようになったのは、築山殿が彼女の死を悼み、椿を植えたことに由来するといわれています。
吉田松陰の『辛亥歳雜抄』では、お田鶴の方は烈婦の一人として挙げられています。また、『改正三河後風土記』では、お田鶴の方の節操が称えられ、『東海道五十三次:附・名数雑談』では、武勇は巴御前に劣らず、節操は細川ガラシャにも優ると評されています。
お田鶴の方と連龍の嫡男である義廣の誕生を祝って大凧が揚げられたことが、浜松まつりの起源であるという説もあります（ただし、近年の研究では創作であるとされています）。

まとめ

お田鶴の方は、戦国時代という激動の時代に、夫の無念を晴らすため、そして、城を守り抜くために、勇猛果敢に戦った女性でした。彼女の武勇、節操、そして壮絶な最期は、後世の人々に深い感銘を与え、今もなお語り継がれています。

もう一度検索

お田鶴の方