かごめかごめ

かごめかごめ：日本の伝承童謡の謎を解く

「かごめかごめ」は、日本の伝統的な子供の遊び、およびその際に歌われる歌です。「細取」「子捕り」「子をとろ子とろ」とも呼ばれます。子供たちが輪になって歌い、鬼役が後ろにいる人を当てるこの遊びは、一見単純ですが、その歌詞や背景には多くの謎が隠されています。

遊び方と概要

遊び方は、まず一人が目隠しをして鬼となり、中央に座ります。他の子供たちは鬼の周りを輪になって歌いながら回ります。歌が終わると鬼は後ろにいる人を当てます。この単純なルールの中に、日本の文化や歴史が隠されていると言われています。

全国各地で歌詞は異なっていたものの、昭和初期に山中直治氏によって記録された千葉県野田市の歌が全国に広まりました。現在では、この野田市が発祥の地とされており、東武野田線の清水公園駅前には「かごめの唄の碑」が建立されています。

歌詞のバリエーション

地域によって歌詞には様々なバリエーションが存在します。以下に代表的なものをいくつか紹介します。

かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる　夜明けの晩に 鶴と亀と滑った 後ろの正面だあれ？
かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる　夜明けの晩に 鶴と亀が統べた 後ろの正面だあれ？
かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる　夜明けの晩に つるつる滑った 鍋の鍋の底抜け 底抜いてたもれ
かごめかごめ 籠の中の鳥は いつもかつもお鳴きゃぁる（お鳴きやる）　八日の晩に　鶴と亀が滑ったとさ、ひと山　ふた山　み山　越えて ヤイトを すえて やれ 熱つ や（お灸を据えて、やれ熱や）
籠目籠目　加護の中の鳥居は　いついつ出会う　夜明けの番人　つるっと亀が滑った　後ろの少年だあれ？

これらの歌詞は、地域によって言葉遣いや表現が異なり、多様な文化が反映されています。

歴史的背景

「かごめかごめ」の文献上の初出は江戸中期以降とされています。ただし、「後ろの正面」という表現や「鶴と亀」というモチーフは、明治末期以前の文献では確認されていません。このことから、これらの表現は後世に付け加えられたものと考えられています。

「かごめかごめ」と似た遊び歌として、京都には「京の大仏つぁん」というものがあります。これは、中央に座った鬼が後ろの人物を当てるというルールは同じで、歌詞は当時の大仏焼失と三十三間堂の奇跡的な無事を歌っています。

現存する文献

竹堂随筆：文政3年（1820年）頃に編纂された童謡集で、「かごめかごめ」の原型と見られる歌詞が収録されています。
戻橋背御摂：文化10年（1813年）に初演された歌舞伎で、子供の遊び歌として「かごめかごめ」が取り入れられています。
月花茲友鳥：文政6年（1823年）に初演された浄瑠璃で、歌詞の一部が確認できます。
幼稚遊昔雛形：天保15年（1844年）に刊行された童謡集で、歌詞と遊び方が記載されています。
俚謡集拾遺：1915年（大正4年）に刊行されたもので、各地の歌詞が記録されています。

これらの文献を通じて、「かごめかごめ」が時代とともに変化し、多様なバリエーションを生み出してきたことがわかります。

歌詞の解釈

「かごめかごめ」の歌詞は非常に多義的であり、様々な解釈が存在します。以下に主なものを紹介します。

「かごめ」について

籠目：竹で編まれた籠の編み目を指すとする説。
囲め：「囲め、囲め」と呼び合っているとする説。
屈め：鬼に対して「屈め、屈め」と言っているとする説。
籠女：籠を抱いているような女性、つまり妊婦を指すとする説。
神具女/神宮女：巫女や斎宮を意味する説。
亀甲紋：神紋を指すとする説。

「かごのなかのとり」について

籠の中の鳥：鬼役を指すとする説。
籠の中の鳥居：神社を指すとする説。
胎児：妊婦の中にいる胎児を指すとする説。
子供：単に子供を指すとする説。
祭り等の締め役：祭りの最後尾を指すとする説。
紋章：「二重亀甲違い鷹の羽」などの紋章を指すとする説。

「いついつでやる」について

疑問：「いつになったら出てくるの？」という疑問を表すとする説。
疑問（西日本）：「いつになったら出て行けるの？」に親しみのニュアンスを持たせた表現とする説。

「よあけのばんに」について

真夜中過ぎ：夜明けと晩の間、真夜中過ぎを表すとする説。
夜明けの番人：鶏を指すとする説。
時間の経過：朝早くから夜遅くまでという時間の流れを指すとする説。
胎児の視点：胎児から見た臨月を指すとする説。
存在しない時間：時間概念が狂っている状態を表すとする説。

「つるとかめがすべった」について

吉兆・凶兆：縁起の良い象徴が滑ることで吉凶を表すとする説。
為政者：鶴と亀に象徴される為政者を表すとする説。
京都の童謡：京都に伝わる童謡の歌詞が変化したとする説。
死：長寿の象徴である二つが滑ることで死を表すとする説。
明智光秀：敦賀と亀岡を統べる明智光秀を指すとする説。
日光東照宮：日光東照宮の「鶴」と「亀」の彫刻を指すとする説。
対称性の崩壊：対称性が破れることを指すとする説。

「うしろのしょうめん　だあれ」について

真後ろの人物：真後ろにいる人を問うとする説。
鬼の背面：鬼の背中側を指すとする説。
逆の存在：逆の存在、影の指揮者、取り憑いていた存在などを表すとする説。
対称性：表と裏といった対称的な物事を例えているとする説。
豊臣秀吉：正面を京都の方広寺大仏殿に例え、背後に葬られた秀吉を連想させるとする説。
斬首された首：斬首された首が体と逆を向いている状態を表すとする説。
明智光秀：明智光秀の出身地から日光の方向を向き、後ろの正面が大阪府岸和田市になるとする説。

歌全体の解釈

これらの解釈を踏まえ、歌全体の意味を解釈する試みも数多く存在します。以下に主な説を紹介します。

言葉遊び説：歌詞の多義性や論理のおかしさを楽しむ言葉遊びの歌とする説。
児童遊戯説：単なる児童遊戯の歌とする説。
遊女説：遊女の悲哀を歌ったものとする説。
日光東照宮説：日光東照宮の埋蔵金や構造を暗示する歌とする説。
豊國廟説：豊臣秀吉を神の座から引きずり下ろす為に行われた事件を表すとする説。
芦名埋蔵金説：芦名家の埋蔵金の隠し場所を示す歌とする説。
彌久賀神社説：神紋から特定の神社を指しているとする説。
陰謀説：妊婦が突き落とされて流産した事件を歌ったものとする説。
囚人説：囚人の不安や運命を表すとする説。
明智光秀・天海同一人物説：明智光秀が天海として生き延びたことを示す歌とする説。
神示説：人の精神的目覚めを歌ったものとする説。
天の岩戸説：天照大御神を岩戸から出すことを願う歌とする説。

その他の俗説

降霊術説：霊を呼び出すための歌とする説。
呪術説：子供に神を宿らせるまじないとする説。
遊戯説：影の支配者を当てる遊戯とする説。
ヘブライ語説：歌詞がヘブライ語であるとする説。

関連作品

「かごめかごめ」は、様々な作品にも影響を与えています。以下に主なものを紹介します。

うしろの正面だあれ：海老名香葉子の児童文学作品、斉藤由貴の楽曲、あしべゆうほの漫画作品。
華一匁：アリス九號の楽曲。
弥生：研ナオコの楽曲。
カゴノトリ：TOMOSUKEによるゲーム音楽。
交響曲第2番：久石譲の楽曲。
* ハニーズ：CMに替え歌が使用。

まとめ

「かごめかごめ」は、子供の遊び歌としてだけでなく、日本の歴史や文化、深層心理を探る上で非常に興味深いテーマです。その多義的な歌詞や歴史的背景から、様々な解釈が生まれており、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。

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