からすみ (菓子)

からすみ：東濃、木曽、奥三河地方の伝統菓子

岐阜県東濃地方、長野県木曽郡南部と下伊那郡南西部、愛知県奥三河地方に伝わる「からすみ」は、ボソボソとした食感の一般的なカラスミとは全く異なる、しっとりとした弾力のある蒸し菓子です。これらの地域では、ボラの卵巣を加工したカラスミではなく、この米粉製の和菓子を指します。

特徴と材料

この独特の和菓子は、米粉をベースに砂糖や黒糖を加え、よもぎ、くるみ、落花生、紅芋、紫蘇など、様々な材料を練り込んで蒸して作られます。材料のバリエーションの豊富さが、地域ごとの個性豊かな風味を生み出していると言えるでしょう。名古屋名物のういろうと製法や食感が似ていますが、からすみの方がより固く、弾力のある仕上がりになります。

各地の風習と桃の節句

東濃地方（岐阜県中津川市、恵那市、瑞浪市など）、木曽地方（長野県木曽郡南木曽町、大桑村、下伊那郡根羽村、平谷村など）、奥三河地方（愛知県北設楽郡設楽町、豊田市の稲武町など）では、古くからこのからすみが作られ、親しまれてきました。特に桃の節句には、各家庭でからすみを作るという伝統的な風習があり、春の訪れを祝う大切な行事として受け継がれています。

由来と歴史

江戸時代末期から作られていたと伝えられていますが、明確な起源を示す資料は現存していません。名前の由来については、いくつか説があります。一つは、子宝に恵まれる縁起物として知られるカラスミに形が似ているため、という説。もう一つは、中国から伝わった富士山の形をした墨、「唐墨」に形が似ていることから名付けられたという説です。いずれも、からすみの独特な形状に由来する説であり、歴史の深さと地域住民の思い入れの強さを物語っています。

まとめ

「からすみ」は、それぞれの地域で独自の製法と材料を用いながら、受け継がれてきた伝統的な菓子です。その独特の食感と風味は、訪れた人々を魅了し、地域の人々にとってかけがえのない存在となっています。桃の節句の風習や、名前の由来にまつわる様々な説も、からすみの魅力をさらに深めています。現代においても、地元の菓子職人によって丁寧に作られ、多くの人々に愛され続けている、まさに地域を代表する銘菓と言えるでしょう。

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