かりゆしウェア

かりゆしウェアは、沖縄県を中心として、主に夏の時期に着用される半袖の開襟シャツです。その名称は、沖縄方言で「めでたい」や「縁起が良い」といった意味を持つ「かりゆし（嘉利吉）」に由来しています。

このシャツの誕生は1970年に遡ります。当時の社団法人沖縄県観光連盟会長であった宮里定三氏の発案により、観光振興策の一環として「おきなわシャツ」の名で発売されたのが始まりです。宮里氏は、米軍統治下の1968年に「国民指導員」としてハワイへ派遣された経験があり、その際にハワイのアロハシャツから着想を得て、「沖縄独自のアロハシャツを作ろう」と考えたと言われています。

基本的なデザインはハワイのアロハシャツを参考にしていますが、かりゆしウェアにはいくつかの独自の特徴があります。多くは半袖開襟スタイルですが、ボタンダウンやスタンドカラーといったバリエーションも存在します。アロハシャツと同様に、左胸にポケットが付いているのが一般的です。また、裾はズボンから出して着用することを考慮し、短く直線的なカットが施されている点も特徴です。

柄のデザインにおいては、沖縄の豊かな自然や文化、伝統が反映されています。ゴーヤーやシークヮーサーといった農産物、シーサーやハーリーといった象徴的なモチーフ、そして紅型や八重山ミンサーなどの伝統工芸織物を模した柄が多く採用されています。アロハシャツと比較すると、全体的に落ち着いた印象の柄が多いとも評されます。年に一度、かりゆしウェアに使用される生地のデザインコンテスト「テキスタイルコンテスト」も開催され、新たなデザインの創出が奨励されています。

2000年以降は特にデザインの多様化が進みました。日差しを気にする女性向けの七分袖や、葬儀や法事といったフォーマルな場面で着用できるよう、黒を基調としたデザインのものが販売されています。本来「めでたい」という意味を持つ「かりゆし」とは逆の用途ですが、礼服の代替として着用が認められており、幅広いニーズに応えています。

価格帯も非常に幅広く、手頃な量産品から、芭蕉布や琉球紬といった高級素材を使用した一着数万円の製品まで様々です。

かりゆしウェアの普及は段階的に進みました。当初は柄のバリエーションが限られていたため、沖縄県ホテル組合や旅行会社など、観光関連業界での着用が中心でした。しかし、1990年に一般県民からの名称募集で「かりゆしウェア」に決定し、カジュアル・フライデーなどでの着用推進が始まったことで、徐々に官公庁などでの着用が広まりました。

最大の転機となったのは、2000年に沖縄で開催された九州・沖縄サミットです。このサミットで各国の首脳がかりゆしウェアを着用したことが国内外に広く報道され、一気に知名度が高まりました。このサミットを契機にかりゆしウェアの定義も見直され、デザインの自由度が増した結果、官公庁や銀行、一般企業へと普及が加速しました。2004年には年間出荷枚数が31万枚に達しています。

現在、沖縄県では4月から11月までをかりゆしウェアの着用推進期間として定めており、知事をはじめ、多くの地方自治体職員が期間中に着用しています。沖縄県議会でも1999年から議場内での着用が認められ、今では多くの議員が着用しています。郵便局や日本トランスオーシャン航空などでは、独自の柄を夏の制服として採用している例もあります。県外企業の沖縄支社などでも、夏のクールビズスタイルとして着用する動きが見られます。

メディアにおける普及事例としては、NHK沖縄放送局の番組キャスターやリポーターが夏季に着用したり、全国ネット番組であるTBS系「筑紫哲也 NEWS23」のメインキャスターが夏季に着用したこともあります。スポーツ界でも、バスケットボールチームの琉球ゴールデンキングスのスタッフが試合時に着用するなど、様々な分野で受け入れられています。

2005年以降、「クール・ビズ」運動の一環として、中央官庁での着用も推進されるようになりました。環境大臣が沖縄・北方担当大臣を兼務していたこともあり、積極的に取り入れられ、内閣府沖縄振興局などでの着用が広がりました。首相や閣僚が夏の初めの閣議でかりゆしウェアを着用するのが恒例となっています。クールビズにおけるかりゆしウェアの着用は、日本の夏の新しい働き方を示す象徴的な光景の一つとなっています。

「かりゆしウェア」という名称は沖縄県工業連合会によって商標登録されています。ブランド名を使用するには、連合会から委託を受けた沖縄県衣類縫製品工業組合の認定が必要です。この認定を受けるためには、「沖縄県内で縫製されたものであること（布地は県外産でも可）」および「沖縄観光をPRする柄であること」という二つの基準を満たす必要があります。これにより、かりゆしウェアの品質と地域性が保たれています。

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