きょしちょう座ゼータ星

きょしちょう座ζ星

きょしちょう座の方向およそ28光年彼方に位置する、見かけの明るさが4等級の恒星です。分類としては、黄色がかった白色をした主系列星に属します。私たちの太陽がそうであるように、中心部で水素の核融合を続けている段階の星です。

特徴と太陽との比較

この星は、質量や大きさの点では私たちの太陽とほとんど変わりません。しかし、表面温度がわずかに高いため、太陽と比べてより明るく輝いて見えます。地球からの正確な距離は、欧州宇宙機関のヒッパルコス衛星による視差の測定データに基づき、約28.0光年という非常に高い精度で求められています。

星に含まれる金属元素（ヘリウムよりも重い元素）の量は、太陽と比べると少なめであり、およそ7割程度の金属量を持つと推定されています。それでも、それ以外の基本的な性質は太陽によく似ています。推定年齢も約38億歳とされており、これは約46億歳の太陽と比べてそれほど大きな差はありません。このような、質量、大きさ、年齢といった主要な特性が太陽に類似していることから、もしこの星の周りに地球のような環境を持つ惑星が存在するならば、生命の存在を示す兆候を探る上で、非常に興味深い、格好の観測対象となり得ると考えられています。

銀河内での運動

きょしちょう座ζ星は、「おおぐま座運動星団」と呼ばれる恒星のゆるやかな集まりに属しています。これは、宇宙空間をほぼ同じ方向と速度で運動している星たちのグループであり、重力的に密接に結びついているわけではありません。この星の銀河内での運動速度は、銀河中心に向かう方向（U）、銀河の自転する方向（V）、そして銀河の北極方向（W）の成分で表現すると、それぞれ秒速マイナス60キロメートル、マイナス4キロメートル、マイナス38キロメートルとなります。銀河の中心から平均しておよそ8,400パーセク（約2万7000光年）の距離を、わずかに楕円形を描くような軌道（軌道離心率0.16）で周回していると計算されています。

星の周囲の環境

この星の周りからは、波長70マイクロメートルの遠赤外線が予想されるよりも多く検出されています。これは、星の周囲に比較的低温の塵でできた円盤が存在することを示す強い証拠と見なされています。さらに、星の光をスペクトルに分解する分光観測からも、この塵円盤の存在を裏付ける観測結果が得られています。この円盤は、恒星の周りを公転しており、その広がりは少なくとも太陽から地球までの距離の2.3倍（2.3天文単位）以上に及ぶと推定されています。塵の推定される最高温度は218ケルビン（摂氏およそマイナス55度）です。

周囲を詳細に探査した結果、2009年時点では、この星の周りに惑星は直接発見されていません。また、星が惑星の重力によってわずかに揺れ動く様子を捉える視線速度法の観測からは、木星のような大きな質量を持つ惑星が存在する可能性は低いという結論が得られています。しかし、より小さな地球型惑星が存在する可能性については、今後の観測によって明らかにされることが期待されます。

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