きりふり

きりふりは、東武鉄道がかつて運行していた特別急行列車です。主に浅草駅から東武日光駅間を、伊勢崎線および日光線を経由して結んでいました。

この列車は、元々は「急行」として位置づけられていました。2006年3月のダイヤ改正において、同時期に急行として運行されていた「ゆのさと」「しもつけ」と共に、料金体系は急行時代のまま「特急」列車へと格上げされました。これにより、同じ特急である「けごん」と比較して安価な料金で利用できるという特徴を持っていました。

特急化された時点では、「ゆのさと」が臨時列車化され、「きりふり」と「しもつけ」が定期運行を継続しましたが、運行本数は削減されました。「しもつけ」は2020年に廃止となり、「きりふり」もまた、2022年3月12日のダイヤ改正をもって定期列車の設定が全てなくなりました。定期運行終了後も、列車名や料金設定は東武の旅客営業規則にしばらく残っていましたが、2023年3月18日の特急料金改定に合わせて削除され、名実ともにその歴史に幕を下ろしました。

運行形態は時代によって変化しました。2006年の特急化当初、定期列車は平日夜間に浅草駅から南栗橋駅へ向かう1本のみでした。2013年3月からは浅草駅から春日部駅へ向かう平日夜間列車も加わりました。これらは2017年4月のダイヤ改正まで運行され、以降は近距離特急として「スカイツリーライナー」や「アーバンパークライナー」が設定されました。一方、臨時列車としては多客期の土休日を中心に、浅草駅と東武日光駅を結ぶ昼行便も運行されていました。定期運行終了直前は、土休日ダイヤのみ浅草～東武日光間に1往復が設定され、これに加えて朝の春日部→浅草間、夕方の浅草→新栃木間を走る区間便がそれぞれ1本ずつ設定されていました。平日の定期列車設定はなくなっていました。

定期運行終了時の主な停車駅は以下の通りでした。

浅草駅
とうきょうスカイツリー駅
（曳舟駅：春日部発浅草行きの区間便のみ停車）
北千住駅
春日部駅
栃木駅
新栃木駅
新鹿沼駅
下今市駅
東武日光駅

また、「幸手桜まつり」の期間には幸手駅への臨時停車も実施されることがありました。

使用された車両は、急行時代から300型または350型電車が充当されていましたが、定期運用が終了する頃には350型のみが使用されていました。

「きりふり」が誕生する以前の東武日光線・鬼怒川線系統の優等列車にも長い歴史があります。1950年代には有料急行が運行され、当初は「あかなぎ」「なんたい」など複数の愛称が使われていましたが、1969年には東武日光駅発着の急行が「だいや」、鬼怒川公園駅発着が「おじか」に統一されました。1976年には種別が「快速急行」に変更されますが、これは当時の「りょうもう」と比較して設備面で見劣りしたため、「急行」より下位の種別として位置づけられたものでした。1985年には冷房付きの6050系が登場し、快適性が向上します。そして1991年、1800系電車を改造した急行専用車両300型・350型が登場したことにより、列車種別は再び「急行」に戻され、「だいや」は「きりふり」へ、鬼怒川線方面の「おじか」は「ゆのさと」（鬼怒川温泉・鬼怒川公園発着）と「南会津」（野岩鉄道・会津鉄道直通）へと愛称が改められました。

「きりふり」とともに登場した「ゆのさと」は2006年に特急化されますが、定期列車としては廃止され臨時列車となりました。その後、運行機会は減少し、規則からも削除されています。「南会津」は特急化されずに急行のまま運行を続けましたが、並行する快速列車の整備などにより本数を減らし、2005年に廃止となりました。後に臨時特急「スカイツリートレイン南会津号」として復活した時期もありますが、2017年の「リバティ会津」新設に伴い運行を終了しています。

列車名「きりふり」は、日光国立公園内にある「霧降の滝」や「霧降高原」に由来しています。また、かつてこの系統で使われた他の列車名にも、「だいや」（大谷川）、「おじか」（男鹿川・男鹿高原）、「ゆのさと」（湯の出る里）など、沿線の地理や温泉に関連するものが多く見られます。

このように、「きりふり」は東武鉄道の主要観光地である日光・鬼怒川方面への優等列車として、その歴史の中で車両や種別、運行形態を変えながら長く親しまれてきましたが、定期運行の終了をもってその役目を終えました。

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