くじゃく座

くじゃく座について

くじゃく座（くじゃくざ、Pavo）は、現代の88星座の一つであり、比較的新しく、16世紀末に形成されました。この星座は、優雅な姿のクジャクをモデルにしています。特に、くじゃく座はその北端に位置しており、赤緯-56°44′という南寄りの位置にあります。そのため、日本国内からはその姿全体を見ることは難しいのが実情です。

主な天体

恒星

国際天文学連合（IAU）によれば、くじゃく座に存在する恒星の中で認証された個別名を持つ恒星は2022年4月現在、わずか1つです。

• - α星：この星は明るさが1.918等で、くじゃく座内で最も明るい恒星です。そして、唯一の2等星です。実際には分光連星であり、主星であるAa星には「ピーコック」という特別な名前がつけられています。
• - β星：この恒星は、見かけの明るさが3.48等の3等星で、くじゃく座の中で2番目に明るい恒星です。
• - δ星：明るさは3.96等とされ、G型主系列星でもあるこの星は太陽に似た特徴を持ち、約20光年の距離に位置しています。
• - SCR 1845-6357：この連星系にはM8.5型の赤色矮星とT6型の褐色矮星が含まれており、約13光年の距離にあります。

星団・星雲・銀河

• - NGC 6752：この球状星団は明るさ5.4等で肉眼でも観察が可能です。これは、オメガ星団やきょしちょう座47に次いで、全天で3番目に明るい球状星団とされています。また、著名な天文学者パトリック・ムーアは、アマチュア天文家にとって良好な観測対象としてこの星団をコールドウェルカタログの93番に選定しています。
• - NGC 6744：この渦巻銀河は天の川銀河から約3,100万光年の距離にあり、外観が非常に似ています。こちらもコールドウェルカタログで101番として記載されています。

由来と歴史

くじゃく座は、16世紀から17世紀にかけての天文学者たちによって形成されました。特に、星座が広まったのは1603年にヨハン・バイエルが『ウラノメトリア』という星図を出版したことからです。しかし、実際にこの星座を初めて設定したのは1598年にオランダの天文学者ペトルス・プランシウスでした。彼は、オランダの航海士とともに東インド航海での観測記録をもとに星座を作り上げました。その姿は天球儀に描かれ、オランダ語名の「Pau」とラテン語名の「Pavo」が添えられました。
この星座は1922年にIAUの設立総会で正式に88星座の一つとして認定され、名称も「Pavo」と定められました。ただし、その新しさゆえ、神話や伝説にまつわるエピソードは存在しません。

中国における認識

中国において現在のくじゃく座の領域は、古代の星座には含まれていませんでしたが、明代の天文書『崇禎暦書』で初めてその星々が記載されました。当時、中国では南天の新設星官をこの天文書に基づいてほぼそのまま取り入れられ、くじゃく座の星は「孔雀」として知られるようになりました。

呼称と方言

日本では、明治末期から「孔雀」という訳名が用いられていました。この訳名は1910年に改訂された際に初めて確認され、1925年には『理科年表』にも同様の名前が記載されています。1944年に天文学用語が見直され、その呼称が定着しました。1952年には日本天文学会によって、名称が「くじゃく」と正式に改められ、以降も使用されています。中国の現代語でも「孔雀座」と呼ばれています。

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