こぐま座ゼータ星

こぐま座ζ星

こぐま座ζ星は、北天の星座であるこぐま座に属する恒星です。太陽系からはおよそ369光年の距離に位置し、地球から見た明るさ（見かけの等級）は4.29等です。この恒星は、一部の星表では「アリファー・アル・ファルカダイン」という固有名で呼ばれることがありますが、これはアラビア語で「2頭の子牛のうち暗い方」を意味する言葉に由来しており、本来はこぐま座の別の2つの星（β星とγ星）を指す名称であったとされています。また、中国の伝統的な星官では、こぐま座α星などと共に勾陳という星官を構成し、勾陳の4番星を意味する「勾陳四」と呼ばれていました。

物理的特徴

こぐま座ζ星は、スペクトル型がA3 Vnと分類されるA型主系列星です。「Vn」は、スペクトル線の形状が「狭い」ことを示す接頭辞（または接尾辞）であり、恒星の自転速度が速いことを示唆しています。この星の物理的なサイズは太陽よりもかなり大きく、半径は太陽のおよそ6倍にも達すると推定されています。また、放つ光の総量を示す光度は、太陽の約200倍程度と考えられています。主系列星とは、恒星が中心部で水素の核融合反応を行っている安定した段階にある星を指しますが、こぐま座ζ星は同程度のスペクトル型の一般的な主系列星と比べて光度が著しく高いとされています。この事実は、この星が主系列段階を終えつつあり、より明るく巨大な巨星へと進化を開始する直前の状態にある可能性を示唆しています。

変光の可能性

こぐま座ζ星は、変光星である可能性が長年にわたり指摘されています。19世紀には、天文学者のトーマス・エスピンが、この星の明るさが4.2等から4.7等の間で変化すると報告しました。その後も、この星の明るさが変動していることを示唆する観測報告がいくつか存在します。もしこぐま座ζ星が実際に変光しているのであれば、その明るさの変化のパターンから、たて座δ型変光星と呼ばれるタイプに分類される可能性が考えられています。たて座δ型変光星は、恒星の内部で起こる脈動によって周期的に明るさが変動するタイプの変光星です。しかしながら、現代の観測によって、こぐま座ζ星が継続的かつ規則的に明るさを変化させる変光星であることが確定したわけではありません。そのため、現在の変光星に関する公式なカタログにおいても、こぐま座ζ星は「新しい変光星候補（NSV 7263）」の一つとして扱われており、確定した変光星としての分類は得ていない状況です。この星の変光の有無やその性質については、今後の精密な観測による確認が待たれています。

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