さかなちゃん

『さかなちゃん』は、1976年下半期に放送されたポーラテレビ小説の第17作にあたる連続ドラマで、岩間芳樹氏によるオリジナル脚本です。ポーラテレビ小説は、明治から昭和期にかけての女性の半生を描く作品が多い中、本作は昭和40年代を舞台としている点が特徴です。

あらすじ

物語の舞台は、宮城県の塩釜漁港。魚市場で働く男勝りの倉田キヨは、周りから「さかなちゃん」と呼ばれて親しまれていました。彼女の父・圭造は、長年の夢であった自分の漁船を手に入れます。しかし、船を維持するためには多額の費用がかかり、圭造は資金繰りに奔走します。そんな中、キヨの姉の夫である水田が、田畑を担保に資金を工面すると申し出ます。当初は娘婿の世話になることを拒否していた圭造ですが、やむを得ず水田の厚意を受けることになります。こうして水田も第一清竜丸の仲間入りを果たします。

「海のことは私が一番詳しいのに」と、どうしても父の船に乗りたいキヨは、密かに密航を企てます。そこに、キヨの喧嘩仲間であるタカクラケンが「俺も乗せてくれ」と詰め寄り、二人で船に乗り込みます。しかし、出港初日に見つかってしまい、キヨとケンは銚子で下船させられてしまいます。2ヶ月後、第一清竜丸から大漁の知らせが届き、その頃、水産研究所の所員である信也がキヨの家に下宿することになります。地元の利益を優先する漁民と信也の意見は対立し、信也は東京に戻ることになります。

12月になり、船が帰港する予定でしたが、入港2日前に嵐に遭遇し、船は遭難してしまいます。キヨたちは悲しみに暮れる暇もなく、乗組員の家族のために出来る限りの償いをしなければならないという現実に直面します。一年後、圭造を見かけたという噂を聞きつけたキヨは、東京へ父を探しに行きます。再会した圭造は記憶を失い、施設に保護されていました。キヨは父の記憶が戻ると信じ、彼を引き取ります。しかし、ある日、圭造が作業中に事故に遭ったという知らせが届きます。病院に駆けつけたキヨでしたが、圭造はすでに病院を抜け出していました。

実は漁船の事故は当て逃げであり、記憶を取り戻した圭造は、相手の船を突き止めようとします。圭造の右腕である梅さんは、当て逃げ犯の暴力団の船会社に軟禁されていました。梅さんを救うために乗り込んだタカクラケンは、その場で殺害されてしまいます。ケンが天国の門に入ると、そこには事故で亡くなった虎さんや水田たちがおり、彼らは天国の穴から地上の様子を覗いていました。圭造と梅さんの証言により、海難審判が始まることになります。

出演者

倉田キヨ - 五十嵐めぐみ
倉田圭造 - 高松英郎
倉田松代 - 町田博子
倉田正子 - 末次美沙緒
水田和江 - 木内みどり
水田 - 新克利
タカクラケン - 目黒祐樹
菊池信也 - 名高達朗
梅さん - 織本順吉
鈴木社長 - 金子信雄
虎さん - 山谷初男
紀子 - 立石涼子
川辺 - 諏訪圭一
秀子 - 和田幾子
桑田フミ - 斎藤美和
山崎 - 寄山弘
ジョージ - 湯原昌幸

スタッフ

脚本：岩間芳樹
プロデューサー：山田和也、新井定雄
演出：内野健、服部晴治、山泉脩、山田護
音楽：石川鷹彦
ナレーター：五十嵐めぐみ

その他

五十嵐めぐみは、本作がデビュー作となりました。それ以前には森田めぐみの芸名で他のドラマに出演していました。また、グラビアにも多く登場し、ヌードを披露したこともあります。
脚本家の岩間芳樹は、本作の他に「わたしは海」「水中花」など多くのドラマを手掛けています。また、映画「鉄道員(ぽっぽや)」のシナリオも担当しています。
音楽担当の石川鷹彦は、フォークソングブームを支えたギタリストで、数多くのアーティストのバックミュージシャンやアレンジャーとして活躍しています。
当時の「週刊テレビガイド」には、1週間分のストーリーが掲載されていました。
ドラマのノベライズ本が三笠書房から発売されました。

参照文献

「週刊TVガイド」（1976年、東京ニュース通信社）
* 「テレビジョンドラマ」（1983年創刊号、放送映画出版）

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