さきがけ (探査機)

「さきがけ」（MS-T5）は、日本宇宙科学研究所が初めて打ち上げた惑星間探査機です。この探査機は、日本電気によって開発され、1985年1月8日に鹿児島宇宙空間観測所からM-3SIIロケット1号機により打ち上げられました。「さきがけ」は、ハレー彗星を探査するための試験探査機であり、姉妹機である「すいせい」からの技術的な発展が求められていました。

打ち上げに先立ち、1984年10月31日に臼田宇宙空間観測所に新しい受信アンテナが設置され、64メートルのパラボラアンテナが建設されました。この施設は「さきがけ」からのデータを受信するための重要な役割を担いました。

1986年3月11日には、国際的な協力のもとに構成されたハレー艦隊の一員として、ハレー彗星に699万kmまで接近し、太陽風の磁場やプラズマの観測を実施しました。さらに、1987年には日本の探査機として初めて地球スイングバイ（重力を利用して軌道を変更する手法）を成功させました。この軌道変更により、1992年の地球スイングバイでは、わずか80000kmの距離まで接近し、地球の磁気圏を貫通する観測を行いました。

また、1992年の地球スイングバイによって新たな軌道へと投入され、太陽と並走して地球の引力圏内で運行を続けることになりました。「さきがけ」は、地球と太陽との相互作用を観測するために、時折約150万kmの距離を保ちながら運行しました。この探査機は、地球近傍での太陽風と地球磁気圏の相互作用を観測するため、独特な軌道を追求しました。

1998年には、ジャコビニ・ツィナー彗星に接近する計画が検討されましたが、推進剤の不足からその試みは実現しませんでした。その後、1999年1月8日に、探査機の送信機が停止し、運用が終了しました。「さきがけ」は、技術的な挑戦や宇宙探査の新たな知見をもたらした重要なプロジェクトであり、日本の宇宙開発の歴史において重要な一歩となりました。

なお詳細情報は、宇宙科学研究所の公式ページを参照してください。

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