さっぽろ丸

さっぽろ丸：日本のフェリー史に名を刻む一艘

1974年8月2日、林兼造船下関工場で建造されたフェリー『さっぽろ丸』は、東京―苫小牧航路に就航しました。この就航により、同航路は『しれとこ丸』『えりも丸』と合わせて毎日運航体制が整い、それまでフジフェリーから用船されていた『いせ丸』と『しま丸』は返却されました。

『さっぽろ丸』は、当初東京―苫小牧航路を主に担当していましたが、1985年には過給器の換装やイベントホールの設置などの改装工事を経て、航路を大洗―苫小牧航路に変更。しかし、1987年には『おおあらい丸』の就航に伴い、再び東京―苫小牧航路へ戻りました。

1990年、日本沿海フェリーがブルーハイウェイラインに社名変更し、ブランドを『さんふらわあ』に統一したことに伴い、『さっぽろ丸』も1991年に『さんふらわあ さっぽろ』と改名されました。その後、1997年には大阪―志布志航路へ転配されましたが、1998年に『さんふらわあ つくば』の就航により、『さんふらわあ おおあらい』が大阪―志布志航路に転配され、『さんふらわあ さっぽろ』は引退を迎えました。

日本の海を長く航海した『さっぽろ丸』ですが、引退後もその活躍は続きます。1998年にギリシャのStrintzis Lineに売却され、『Ionian Victory』と改名されて就航。その後、2000年にはブルースターフェリーに売却され『Blue Sky』、2004年にはAgoudimos Linesに売却され『Ionian Sky』と、幾度も船名を変更しながら運航を続けました。そして、2013年にはネル・ラインズに売却されましたが、同年9月には機関故障により係船され、その歴史に幕を閉じました。

さっぽろ丸の船体と船内設備

『さっぽろ丸』の船体は、上部からA～Fデッキの6層構造になっており、Eデッキが上甲板でした。A～Cデッキが旅客区画、D～Fデッキが車両搭載区画として使用され、D・Eデッキは大型車、Fデッキは乗用車の搭載区画となっていました。車両の乗降をスムーズに行うため、船首（バウバイザー付）と船尾両舷にランプウェイが設置されていました。

船内には、快適な航海を支える様々な設備が備え付けられていました。プロムナードデッキには特等客室（洋室12室・和室2室）が設置され、Aデッキには1等室（20室）、2等寝台（22室）、ラウンジ、浴室、ホール、プールなどが配置されていました。Bデッキには、2等客室（7室）、エントランスホール、案内所、売店、レストラン、グリル、ラウンジ、ゲームコーナー、カードルーム、浴室など、乗客がくつろげる空間が充実していました。

日本と海外を繋いだフェリー

『さっぽろ丸』は、日本の沿海航路で活躍した後、海外へと渡り、数々の船名で運航を続けました。その長い航海の歴史は、日本のフェリーの歴史を語る上で欠かせない重要な要素であり、日本の造船技術やフェリー運航の変遷を物語る象徴的な存在と言えるでしょう。 日本の海だけでなく、海外の海でも活躍した『さっぽろ丸』は、多くの乗客の思い出と共に、フェリーの歴史に深く刻まれています。

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