さんかく座銀河

さんかく座銀河 (M33)

さんかく座銀河は、正式名称M33またはNGC 598としても知られる、さんかく座の方角に見える渦巻銀河です。

概要

この銀河は、私たちの天の川銀河や隣接するアンドロメダ銀河（M31）と共に、私たちの銀河系が属する「局所銀河群」と呼ばれる銀河の集まりを構成する主要なメンバーの一つです。その質量は天の川銀河の約半分から2倍程度と推定され、広がりはおよそ6万光年にも及びます。

地球からは約300万光年の距離に位置しており、これはアンドロメダ銀河と並び、肉眼で捉えることができる最も遠い天体の一つとされています。アンドロメダ銀河からは比較的近い約75万光年の距離にあります。

観測

観測には良好な条件が求められます。例えば、双眼鏡を使っても、空が非常に澄んでいる場合にのみ確認できる程度です。一般的な望遠鏡では、その広がった姿が不明瞭で、まるでぼんやりとした雲のように見えることが多いです。口径10センチメートル程度の小型望遠鏡を使っても、劇的に見え方が改善されるわけではありません。しかし、光害のない暗い夜空の下で、目が十分に暗闇に慣れた状態で注意深く観察すると、微かにその渦巻腕の構造の片鱗を捉えることができるようになります。

さらに口径30センチメートルといった大口径の望遠鏡を用い、時間をかけて詳細に観察することで、銀河内に点在するNGC 604のような巨大な星形成領域だけでなく、NGC 588、NGC 592、NGC 595といったより複雑な構造も識別することが可能になります。特に写真撮影においては、その特徴的な渦巻腕が鮮明に写し出されます。

地球から見たさんかく座銀河は、ちょうど渦巻の面が手前を向いている典型的な「フェイスオン銀河」の姿をしており、そのため渦巻構造全体を捉えやすい形になっています。

この銀河内には、NGC 604と呼ばれる巨大な散光星雲、すなわち活発な星形成が行われているHII領域が存在します。

肉眼での視認性

さんかく座銀河は空に淡く広がって見えるため、肉眼での視認は非常に困難です。かつて、日本の著名な天文学者である石田五郎氏が「アメリカのアリゾナ砂漠のような条件なら見えるだろう」と述べたところ、これに対して全国各地から日本国内でも肉眼で見えたという報告が相次いだという逸話があります。

1970年代には、当時日本よりも観測条件が良いとされていたアメリカのアマチュア天文家ジョン・マラス氏が「肉眼では見えない」と記したことから、この肉眼視認について大きな議論を呼びました。最終的には、街の明かりなどの光害が皆無な高山など、非常に条件の良い場所であれば肉眼でも捉えることができる、という見解に落ち着きました。

この肉眼での視認可能性については、スウェーデンの天文学者クヌート・ルントマルク氏がかつて論じたテーマでもありました。アメリカのアマチュア天文家ハロルド・ピーターソン氏は、肉眼での観測を何度も試みて失敗したものの、結果として「何となく芯がある、かすかな広がり」として感じ取ったと報告しています。かつてのブリタニカ百科事典では、有名なオリオン大星雲（M42）やアンドロメダ銀河（M31）と並び、「肉眼で見える三大星雲」の一つとして挙げられていました。

銀河の運動

さんかく座銀河は、現在、私たちの天の川銀河に向かって秒速約24キロメートルで接近しています。天の川銀河とアンドロメダ銀河は約40億年後に衝突して一つの巨大な楕円銀河になると予測されていますが、さんかく座銀河もその衝突の前後で、これらいずれかの銀河と合体する可能性があると考えられています。

2005年には、銀河内の二つの星形成領域から放射される水分子メーザーを精密に観測することにより、銀河全体の天球上での動き、すなわち「固有運動」が初めて計測されたと発表されました。これは銀河の固有運動が観測された最初の事例となりました。

発見の歴史

さんかく座銀河は、イタリアの天文学者ジョヴァンニ・バッティスタ・オディエルナによって、1654年よりも前に既に発見されていた可能性が指摘されています。これとは別に、フランスの天文学者シャルル・メシエが1764年8月25日に独立して発見し、自身の作成した天体カタログ（メシエカタログ）の33番目の天体として登録しました。

メシエは当時の観測記録に「ほとんど濃度に変化がない星雲だが、中心から2/3ほどの範囲がやや明るい。星は見られない」と書き残しています。

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