さんふらわあ にしき

さんふらわあ にしき：瀬戸内海の思い出を乗せて

『さんふらわあ にしき』は、かつて関西汽船が運航していたフェリーです。1992年12月19日、神戸（阪神）―松山―別府航路に就航しました。この船は、同社の老朽客船の代替として、僚船の『さんふらわあ こがね』と共に建造されました。建造はカナサシ豊橋工場で行われ、同型船であるダイヤモンドフェリーの『ブルーダイヤモンド』、『スターダイヤモンド』とほぼ同じ設計となっています。

それまで、神戸―別府航路では3往復の運航のうち、一部が従来のフェリー以外の船舶で運航されていましたが、『さんふらわあ にしき』と『さんふらわあ こがね』の就航により、全便がフェリーによる運航体制となりました。就航に先立ち、それまで運航されていた『あいぼり丸』と『こばると丸』は8月に引退しており、それまでの間は『フェリーコスモ』が暫定的に運航に当たっていました。

『さんふらわあ にしき』の船内は、7層のデッキで構成されていました。最上部は羅針儀甲板、その下に航海船橋甲板があり、操舵室などが配置されていました。AデッキとBデッキは乗客用の船室エリアで、快適な空間が提供されていました。CデッキとDデッキ前部は乗組員とドライバーの居住区画、Dデッキ後部とEデッキは車両の積載区画となっていました。また、船首にはバウドアとランプウェイドア、船尾にはサイドランプウェイドアが設置され、車両の積み下ろしをスムーズに行うことが可能でした。船内のインテリアは、軽快な色調が用いられ、乗客に心地よい雰囲気を提供していました。

客室は、豪華な特等室から2等寝台、2等客室まで多様なタイプが用意されていました。Aデッキにはデラックスルームとして特等室（2名×3室、1名×4室）、1等室（4名×12室）、2等寝台（12名×24室）、2等客室（5室）が、Bデッキには特等室（2名×3室）、1等室（2名×18室）、2等客室（8室）が配置され、多くの乗客を受け入れることができました。さらに、ラウンジ、レストラン、売店、ビジネスコーナーなども完備され、船旅を快適に過ごすための設備が充実していました。

2009年11月1日、関西汽船とダイヤモンドフェリーが統合し、「フェリーさんふらわあ」が発足しました。これにより、『さんふらわあ にしき』の運航も同社に移管されました。しかし、2010年2月、寄港地の廃止による減便の影響を受け、運航を終了しました。その後、海外へ売船され、フィリピンで『SUPERFERRY 21』として、さらにネグロス・ナビゲーションに移籍し『St Leo The Great』として2GOブランドで運航されました。2022年1月、バングラデシュで解体されました。

『さんふらわあ にしき』は、関西汽船、そして日本のフェリーの歴史において重要な役割を果たした船です。その豪華な設備と快適な航海は、多くの乗客に忘れられない思い出をもたらしました。その歴史は、日本のフェリーの歴史の一部として、これからも語り継がれていくでしょう。

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