しまね和牛

しまね和牛：神話の里が生んだ極上の黒毛和牛

しまね和牛は、島根県で生産される黒毛和種の総称であり、その背景には豊かな自然と長い歴史があります。出雲神話に登場する牛飼いの神、和加布都努志能命（わかふつぬしのみこと）が牛による農耕を教えたという伝説が残る地で、古くから牛は人々の生活に深く関わってきました。

しまね和牛の歴史

その歴史は古く、延慶3年（1310年）の『国牛十図』や応安2年（1369年）の『駿牛絵図』には、出雲国と石見国（現在の島根県）が良牛の産地として記されています。江戸時代には松江藩が牛の生産を奨励し、仁多、大原、飯石・神門などで盛んに飼育が行われました。たたら製鉄が盛んだった中国山地では、牛馬が物資の輸送手段として重要な役割を果たしていました。

戦後、役牛の需要が減少すると、島根県では肉牛生産への転換が進められました。品種改良の努力が実を結び、1987年（昭和62年）に開催された第5回全国和牛能力共進会（和牛のオリンピック）では、島根県産の黒毛和種「富桜号」が肉牛部門で内閣総理大臣賞を受賞。その品質の高さが全国に知れ渡りました。

2022年（令和4年）の第12回全国和牛能力共進会では、出雲市の藤増牧場と雲南市のJAしまね吉田肥育センターが「総合評価群 肉牛群」で第1位を獲得。さらに、同年の全国肉用牛枝肉共励会では、益田市の松永牧場が最高賞である名誉賞を受賞しました。全国の銘柄牛が競う2大大会で同一ブランド牛が2冠を達成するのは史上初の快挙です。

しまね和牛のブランド

しまね和牛には、地域ごとの特色を生かした多様なブランドが存在します。

いずも和牛 (出雲市): 去勢された牛、または未経産の雌牛のみが出荷される、きめ細やかな肉質が特徴です。過去には全国和牛能力共進会で内閣総理大臣賞や農林水産大臣賞を受賞しています。
隠岐牛 (隠岐諸島): 日本海に浮かぶ隠岐諸島で育った未経産の雌牛で、肉質等級が4等級以上のものだけが出荷されます。豊かな自然の中で育まれた、とろけるような味わいが魅力です。山内道雄元海士町長の尽力によりブランド化が進められました。
松永牛 (益田市): 松永牧場で丹精込めて育てられた牛。その品質の高さは、数々の賞を受賞していることからも明らかです。銀座と北新地には、松永牧場から仕入れた牛肉を提供する焼肉店があります。
銀山和牛 (大田市)
奥出雲和牛 (雲南市・奥出雲町・飯南町)
石見和牛肉 (邑南町)
* かつべ和牛(出雲市)

これらのブランドは、それぞれ独自の飼育方法や環境によって、他にはない味わいを生み出しています。

しまね和牛は、その輝かしい歴史と卓越した品質で、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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