すま (海洋観測艦)

海洋観測艦「すま」についての概要

「すま」は、海上自衛隊がかつて運用していた海洋観測艦であり、艦名は兵庫県須磨区の名勝地に由来しています。この艦は、旧海軍の防護巡洋艦や砲艦に続く4代目の艦名で、特務艇「すま」からも名づけられました。

1. 役割と背景

海上自衛隊は、対潜戦のパッシブ化が進む中で、効率的な海上作戦の遂行には海洋環境の詳細な資料収集が不可欠であることを認識しました。具体的には、海底地形や底質、潮流、地磁気、水質（温度や塩分など）、海上気象情報を網羅的に測定する必要がありました。これを受けて、昭和42年度に「あかし」が建造され、1969年には海洋業務隊が新設され、海洋環境情報活動が始まりました。

しかし、あかしのみでは十分な情報を収集することは困難であり、1974年からは5隻のかさど型掃海艇を海洋観測艇へ改造し、観測任務に充当しました。このような取り組みから、より大型の代替艦が必要視され、昭和54年度計画に基づき「すま」が造船されることとなったのです。

2. 設計と性能

「すま」の設計は、商船構造の長船首楼型で、「あかし」と似たような構成を有しています。右舷側には観測甲板が設けられており、艦尾甲板と面一となった作業甲板が煙突直下まで続いています。また、音響観測艦としての機能も持っており、そのための能力も強化されています。

本艦は、その設計において、減揺タンクを備えており、揺れを抑える工夫がなされています。しかし、装備器材が豊富であるにもかかわらず、艦型が小さいため、内部に余裕がないという課題も抱えていました。長期間の航海に対応するため居住性にも配慮がなされ、特に自衛艦として珍しい舷窓が設けられました。

艦の主機関には、当時一般的な直列6気筒の富士ディーゼルエンジンが二基搭載されています。さらに、観測時の静粛性を重視した補助的な推進器として、艦首部に隠顕式のアジマススラスターが配備されています。

3. 艦歴

「すま」は、1980年9月に日立造船舞鶴工場で起工され、1981年9月に進水、1982年3月に就役しました。以後は海洋業務群に編入され、横須賀に配備されました。その運用の中で、2011年には東日本大震災の災害派遣に従事しました。

この艦は2015年6月に除籍されるまでの33年間の艦歴の中で、124回の海洋観測を実施し、防衛省技術研究本部との協力や試験、教務活動に貢献しました。その航海時間数は72,659時間、航程は約692,940海里に及び、これは地球を32周するのに相当します。

「すま」は、その活躍を通じて海洋環境情報の収集に大きな役割を果たしました。

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