映画『その夜の妻』の詳細
『その夜の妻』(そのよのつま)は、
1930年7月6日に日本で公開された、
松竹キネマ制作・配給の映画です。この作品は、著名な監督
小津安二郎の手によるもので、モノクロの映像とサイレント形式が特徴的な66分の短編映画です。
本作の原作は、雑誌『新青年』に掲載されたオスカー・シスゴールの短編小説『九時から九時まで』であり、
野田高梧が脚色を担当しました。映画化の提案を行ったのは、
松竹蒲田撮影所の所長であった城戸四郎です。主演は
岡田時彦で、彼にとって小津作品での初主演となります。映画の中では、洋風にデザインされたセットや、アメリカ映画から影響を受けた要素が見受けられ、特に刑事役を演じる山本冬郷は、ハリウッド映画に出演した経験を持つ俳優として注目されています。
物語は、橋爪周二が病気の娘を治療するために拳銃強盗を行い、その後の逃走劇を描いています。周二は、病気の娘みち子のために奪った金を妻のまゆみに渡し、娘が回復したら自首することを約束します。しかし、周二が搭乗していたタクシーの運転手が実は変装した刑事であったことから、緊迫した展開が繰り広げられます。この夫婦の愛と葛藤が、映画の中心テーマとなっています。
初回上映は、帝国館にて行われました。この映画の影響は色濃く、
1952年には池田浩郎監督によってリメイクされました。『その夜の妻』は、
サイレント映画としての独特の魅力と、
小津安二郎の
モダニズムを感じさせる作品であり、映画ファンには忘れられない名作のひとつとして評価されています。
本作の上映用フィルムは、
国立映画アーカイブに所蔵されており、2342.21フィートの16mmフィルムが現在も保存されています。全体として、この映画は日本の初期映画史において重要な位置を占めており、時代を超えたメッセージを持った作品として多くの人々に愛されています。
スタッフとキャスト
- - 監督: 小津安二郎
- - 原作: オスカー・シスゴール『九時から九時まで』
- - 脚色: 野田高梧
- - 撮影・編集: 茂原英雄
- - 監督補助: 佐々木康、清輔彰
- - キャスト:
- 橋爪周二:
岡田時彦
- 妻まゆみ: 八雲恵美子
- 子みち子: 市村美津子
- 刑事香川: 山本冬郷
- 医師須田: 斎藤達雄
- 警官:
笠智衆
アーカイブとしての重要性、文化的影響、また作品自体の感動的な内容が、視聴者に深い印象を与えるこの名作を、ぜひ一度観ていただきたいです。