その夜は忘れない

『その夜は忘れない』は、1962年に公開された吉村公三郎監督による日本映画であり、広島を舞台に原爆の悲劇を描いた社会派ドラマです。

物語の舞台は1962年の広島市。原爆投下から17年が経過し、街は一見すると見事に復興を遂げたように見えます。しかし、その一方で、原爆の傷跡は人々の心に深く刻まれていました。週刊雑誌の編集記者である加宮恭介は、戦後17年の原爆記念特集号の取材のため広島を訪れます。街の復興ぶりに少々拍子抜けしていた加宮は、親友の菊田吾郎に誘われて訪れた店「あき」で、女主人である早島秋子と出会います。

着物を美しく着こなす秋子の魅力に惹かれる加宮ですが、彼女はどこかよそよそしい態度をとります。東京へ戻る前日、秋子は過去の自らの被爆体験を語り始めます。そこから、原爆がもたらした惨劇と、被爆者の苦悩が明らかになっていくのです。

主な登場人物は以下の通りです。

早島秋子 - 「あき」の女主人。過去のトラウマを抱えながら生きている。
加宮恭介 - 週刊ジャーナルの記者。広島の取材を通して、原爆の悲劇を深く認識する。
菊田吾郎 - 加宮の親友。加宮を広島に誘い、秋子との出会いのきっかけを作る。
多津子 - 秋子の幼馴染。芸者置屋を経営しており、秋子を気にかけている。

出演者は以下の通りです。

早島秋子：若尾文子
加宮恭介：田宮二郎
菊田吾郎：川崎敬三
多津子：角梨枝子
芳子：江波杏子
種田：中村伸郎
金子：長谷川哲夫
和代：三木裕子
田村ふさ子：田中三津子
細川：横山明
卓造：寺島雄作
ふみ：村田扶実子
金子の友人：川島真二、三夏伸
初老の患者：隅田一男
自衛隊員：中川邦彦
バーテン：仲村隆
ホテルのボーイ：松本幹二
ホテルの客：大山健二
寝台車の女：穂高のり子
新しいマダム：若松和子
食堂の給仕：赤沢未知子

この映画は、1963年の第3回モスクワ国際映画祭でソ連平和擁護委員会賞を受賞、同年6月には第11回ドノスティア＝サン・セバスティアン国際映画祭で国際カトリック映画事務局賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を受けました。

特筆すべき点として、多津子役を演じた角梨枝子自身が広島県出身であり、被爆者であったことが挙げられます。彼女の出演は、この映画に更なるリアリティと重みを与えました。

この映画は、原爆の悲劇を風化させることなく、後世に語り継ぐための重要な作品の一つと言えるでしょう。関連作品として、広島原爆をテーマとした作品、広島市への原子爆弾投下に関する作品、被爆、被曝、原爆症、被爆者、原爆ドーム、はだしのゲン、二十四時間の情事、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律などがあげられます。

外部リンク
その夜は忘れない - 角川映画
その夜は忘れない - allcinema
その夜は忘れない - KINENOTE
* その夜は忘れない - IMDb（英語）

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