そよかぜ (映画)

映画『そよかぜ』：戦後日本の希望を歌った名作

『そよかぜ』は、1945年10月11日に公開された佐々木康監督による日本映画で、松竹大船撮影所が製作しました。この映画は、戦後の混乱期において、人々に希望と明るい未来を指し示す光となりました。特に、主題歌および挿入歌である「リンゴの唄」は、空前の大ヒットとなり、映画とともに広く愛される歌として、その名を刻んでいます。

あらすじ

物語は、レビュー劇場の照明係として働く、歌手を夢見る少女・みちを中心に展開されます。みちは、並木路子が演じました。みちは、上原謙や佐野周二が扮する楽団員たちに励まされながら、歌手としての才能を開花させていきます。やがて、彼女はスター歌手への道を歩み始めるという、「スター誕生」の物語です。

キャスト

みち：並木路子
舟田（楽団リーダー）：上原謙
* 横山（楽団員）：佐野周二

映画の特徴

この映画は、音楽映画としての側面も持ち合わせています。霧島昇や二葉あき子といった歌手も出演しており、劇中では彼らの歌声も楽しむことができます。当時の映画館の入場料は1円と高額でしたが、多くの人々が映画館に詰めかけ、連日満員となるほどの人気を博しました。

「リンゴの唄」は、映画のオープニングとエンディングで歌われるだけでなく、劇中でも頻繁に歌われ、映画のテーマを象徴する重要な役割を果たしています。永嶺重敏は、「実質的な主題歌は『リンゴの唄』である」と結論づけています。

制作の背景

戦後、GHQ（連合国軍総司令部）の検閲を通った第1号映画とされることが多いですが、実際には検閲を受けなかったという説もあります。永嶺重敏は、製作開始や公開の時期から判断して、検閲を受けなかった可能性が高いと指摘しています。

映画の企画は、戦時中に岩沢庸徳が書いていた戦意高揚映画『百万人の合唱』の脚本を作り変えたものでした。音楽はサトウハチローと万城目正に依頼されましたが、映画の撮影に主題歌が間に合わず、並木はリンゴ畑で歌うシーンの撮影時は「丘を越えて」を歌い、アフレコ時に「リンゴの唄」を吹き込みました。

作品の評価

公開当初は、映画評論家からの評価は高くありませんでした。『朝日新聞』は、「ムシヅを走らせたいと思ふ人はこの映画の最初の十分間を経験しても十分である」と酷評しました。しかし、時代を経るにつれて、映画の持つ魅力が見直され、現在では戦後日本を代表する名作として高く評価されています。

まとめ

映画『そよかぜ』は、戦後の日本に希望を与えただけでなく、音楽の力で人々の心を癒した作品です。「リンゴの唄」とともに、この映画は、日本の映画史に輝かしい足跡を残しました。戦後の困難な時代に、人々に笑顔と勇気を与えた『そよかぜ』は、今もなお、多くの人々に愛され続けています。

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