たたみいわし

たたみいわし（畳鰯）とは

たたみいわし（畳鰯）またはたたみしらすは、カタクチイワシの稚魚（シラス）を原料とした日本の伝統的な食品です。生のシラスを冷水で洗い、葭簀（よしず）や木枠に貼った網で漉いて天日干しすることで、薄い板状（網状）に加工されます。

名称の由来

名称の由来には諸説あります。

かつて畳の材料であるイグサの上で干していた説
縦横にくっついたシラスの形状が畳のように見える説

などが有力です。

製造方法

たたみいわしの製造には、新鮮なシラスが不可欠です。特に、1 - 2センチメートル程度の中細で脂肪の少ない個体が適しています。シラスを水中の型枠全体に均一に広げる作業は熟練の技を要します。また、生シラスを使用する必要があり、一度加熱したシラスではシート状に加工できません。

食べ方と特徴

たたみいわしは、特に味付けがされていません。軽く炙ってパリパリの食感にして、醤油などを付けて食べるのが一般的です。冷蔵庫などの低温暗所にて保存することで、長期間保存が可能です。

日本食品標準成分表2010年版によると、たたみいわしの約75%はタンパク質で構成されています。食品表示法では「水産加工食品」に分類されます。

歴史

たたみいわしは、古くから鶴岡八幡宮への神饌として奉納されてきました。江戸時代の文献にもその記述が見られます。

1643年 - 『料理物語』に相当する料理の掲載
1645年 - 俳諧論書『毛吹草』に伊予の名産として登場
1729年頃 - 『料理無言抄』に加賀藩での製造に関する記述
1789年 - 『寛政武鑑』に信濃国上田藩の献上品として登場
19世紀初頭 - 『料理早指南』や『東海道中膝栗毛』に記述
1847年 - 『重訂本草綱目啓蒙』に記述
幕末 - おかずの番付『日々徳用倹約料理角力取組』に前頭3枚目として登場
明治時代 - 全国各地で製造が盛んになり、神奈川県の湘南から三浦半島付近に専門の加工業者が現れる
1874年 - 東京府が留置者への差し入れ品の上限を定める
1905年 - 奥村繁次郎の『家庭和洋料理法』に料理法が掲載

著名人の言及

土岐村路 - 『路女日記』に食事として登場
谷崎潤一郎 - 『東京をおもふ』で東京の名物として言及。周作人によって解釈される
徳田秋声 - 日記に銀座の大黒屋で注文した記録

たたみいわしが登場する作品

夏目漱石 - 『永日小品』
徳田秋声 - 『黴』
水光山色楼主人編 - 『眠気さま誌』
森鷗外 - 『渋江抽斎』
太宰治 - 『人間失格』
* 浜口乃理子 - 『酒とたたみいわしの日々』

たたみいわしは、古くから日本人に親しまれてきた伝統的な食品であり、その独特の風味と栄養価の高さから、現代でも多くの人々に愛されています。

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