たむらしげる

たむら しげる

たむらしげる氏は、1949年11月26日に東京都大田区蒲田に生まれた日本の絵本作家、イラストレーター、そして映像作家です。本名は田村茂といいます。

経歴

幼少期から青年期にかけてを東京都八王子市片倉で過ごしたたむら氏は、桑沢デザイン研究所を修了後、パッケージ・デザイナーとしてトッパン・アイデアセンターに入社しました。約四年間の会社員生活を経て、絵本『ありとすいか』を出版したことを機に退社し、フリーランスのイラストレーター、そして絵本作家としての道を歩み始めます。

キャリアの初期には、カルト的な人気を誇った漫画雑誌『ガロ』に漫画作品を発表していました。これらの初期作品にはすでに後の作品に通じる幻想的な萌芽が見られ、その後の彼の創作活動における重要な原点となります。宮沢賢治や稲垣足穂といった文学者からの影響を受けつつも、たむら氏自身の内から紡ぎ出される独自の、詩情豊かでどこかノスタルジックな世界観を確立していきました。

1990年代に入ると、たむら氏は表現の場を絵本やイラストレーションにとどめず、映像作品へと活動の幅を広げます。CD-ROM『Amusement Planet PHANTASMAGORIA』で提示された箱庭のような小さな惑星、映像作品『銀河の魚』に描かれた不思議な郷愁を誘う水中の町、『クジラの跳躍』で見られる時が止まりガラス玉となった海のしずくなど、これらの作品には、彼の独創的で繊細な感性が色濃く反映されています。特に『銀河の魚』や『クジラの跳躍』といった短編アニメーションは国内外で高い評価を受け、その映像作家としての才能も広く認知されることとなりました。

2000年代以降は、特に福音館書店の月刊絵本を中心に精力的に作品を発表し続けています。長年にわたり培われてきたたむら氏の持ち味が、子どもたちの想像力を刺激する絵本という形で結実しています。

2017年に偕成社から出版された絵本『よるのおと』は、たむら氏が少年時代に体験したであろう夜の情景や感動が、美しく結晶化されたかのような作品です。この作品は高い評価を得て、彼の新たな境地を示す一冊とも言われています。

多彩な活動

たむら氏の活動は絵本や映像制作にとどまりません。1988年からはテレビ情報誌『TVステーション』（ダイヤモンド社）の表紙イラストレーションを長期にわたって手掛け、その独特のイラストで多くの読者に親しまれました。また、TBS系の報道番組『ブロードキャスター』のオープニングアニメーションや、NHK『みんなのうた』の「ゆうやけ星」のアニメーション制作、ハウス食品のテレビCMシリーズなど、数多くの映像作品や広告分野でもその才能を発揮しています。さらに、中学英語教科書『NEW CROWN』（三省堂）の表紙を16年間にわたり担当するなど、教育分野にも貢献しています。

受賞歴

たむら氏の作品は、その独創性と芸術性が高く評価され、数多くの賞を受賞しています。主なものとしては以下の通りです。

絵本・画集：
『メタフィジカル・ナイツ』：第40回小学館絵画賞
『よるのおと』：第65回産経児童出版文化賞大賞、第7回JBBY賞、第27回桑沢特別賞
映像・デジタル作品：
『銀河の魚』：第48回毎日映画コンクール 大藤信郎賞、Montreux International Electronic Cinema Festival 特別賞
「Amusement Planet PHANTASMAGORIA」：第一回AMDアウォード・グランプリ郵政大臣賞
* 『クジラの跳躍』：第2回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞

絵本から映像まで、たむらしげる氏の生み出す世界は、常に私たちに新たな発見と静かな感動を与え続けています。その唯一無二の表現は、世代を超えて多くの人々を魅了しています。

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