だいおう型巡視船 (初代)

だいおう型巡視船：戦後日本の海上保安体制を支えた大型巡視船

1948年、連合国軍占領下の日本で発足した海上保安庁。その設立当初、保有する船艇は老朽化や整備不足が深刻な問題でした。この状況を打破するため、翌年には新造船の建造計画がスタート。その中で最大規模となったのが、700トン型巡視船、通称「だいおう型」です。

誕生の経緯：困難と技術革新の物語

新造船計画では、国内造船所の協力を得て、設計審議会が設立。複数の造船所が独自の設計案を提出する中、日本鋼管鶴見造船所の案がベースとなりました。しかし、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）からの前甲板での設標作業に関する要望を受け、設計は大きく変更を余儀なくされました。最終的に、アメリカ沿岸警備隊のカクタス級設標船を参考に、船首楼付きの船尾楼型という設計が採用されました。

建造にあたっては、主要構造に鋲接を採用するなど、商船式の建造手法が用いられました。これは、当時、他の初期巡視船が溶接や防火・耐燃性を重視した設計と対照的でした。また、ネームシップである「だいおう」では、約1トンもの耐蝕アルミニウム合金が使用され、国内船における軽合金利用の先駆けとなりました。

設計と性能：先進技術の導入と高い航続能力

「だいおう型」は、三菱重工製の4サイクル中速ディーゼルエンジン2基を搭載。これにより、当時の海上保安庁法で定められていた最高速度である15ノットを達成しました。さらに、7,000海里もの航続距離を確保。これは、当時のマッカーサーライン内での遭難船救助を十分にこなせる能力を有することを意味しています。また、最大2,000トン級の船舶を曳航可能な能力も備えていました。

船内電源は直流225ボルトで、複数の発電機を備え、無線機や航海計器類にも独立した電源を確保。高い信頼性と安定性を確保していました。

装備：多様な任務に対応する機能

GHQの要望を受けて、船橋前には9トンのデリッククレーンを搭載。これにより、大型浮標や測量艇の積み下ろしが可能です。ただし、実際にはあまり使用されませんでした。

航海設備や艤装は、旧海軍の基準を参考に設計されました。当初はレーダーが装備されていませんでしたが、1951年に搭載されました。また、1954年には武装が追加され、3インチ単装砲と20mm機銃が搭載されました。その後、後部の機銃は撤去されました。

船上には複数のボートを搭載し、カッターや内火艇などが装備されました。揚降装置は、タイプシップであるカクタス級と同じ手動式のコロンバス式ダビットが用いられました。後に、搭載艇やダビットの種類に変更が加えられました。

運用とその後：貴重な大型巡視船としての貢献

昭和24年度計画で2隻が建造された後、昭和25年度計画でも建造が予定されていましたが、GHQからの勧告により、240トン型巡視船の建造に変更されました。

建造された2隻は、海上保安庁創設期において貴重な大型巡視船として活躍。しかし、老朽化により1970年代中盤には運用を終了しました。一部の装備は、他の巡視船に引き継がれました。

フィクションにおける登場

「だいおう型」は、特撮映画『海底軍艦』にも登場しています。劇中では、ムウ帝国の人物がタクシーを盗んだ際に、そのタクシーが海に落ちた現場の近くに停泊している様子が描かれています。

まとめ：日本の海上保安史を語る証人

「だいおう型」巡視船は、戦後日本の海上保安体制の黎明期において、その技術力と活躍で大きな役割を果たしました。その設計や装備、運用史は、当時の技術水準や国際情勢、そして日本の海上保安の歩みを理解する上で貴重な資料となっています。また、フィクション作品への登場は、その存在感をさらに印象づけるものとなっています。

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